にかどくログ

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誰でも支配欲、劣等感、嫉妬心を持つ。 ~朝井リョウ著『スペードの3』読了~

みなさん、明けましておめでとうございます。

にかどくです。

 

さて、2021年一発目の投稿は、久々の読書感想記事です。

今回は『スペードの3』という小説を読了したので、こちらの感想を書いていきます。

 

スペードの3 (講談社文庫)

 

 

著者紹介

本作の著者は朝井リョウさんです。

1989年5月生まれ、岐阜県出身。

2009年『桐島、部活辞めるってよ』で第22回小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。 

2012年に同作が映画化され、注目を集める。

2013年『何者』で、戦後最年少で第148回直木賞を受賞。

同年『世界地図の下書き』で第29回坪田譲治文学賞を受賞。

他の著作に『もういちど生まれる』『少女は卒業しない』『武道館』『世にも奇妙な君物語』『何様』などがある。

 

朝井リョウ著『スペードの3

(2017年/講談社/カバー袖より)

概要

有名劇団のかつてのスター”つかさ様”のファンクラブ「ファミリア」を束ねる美知代。

ところがある時、ファミリアの均衡を乱すものが現れる。

つかさ様似の華やかな彼女は昔の同級生。

なぜ。

過去が呼び出され、思いがけない現実が押し寄せる。

息詰まる今を乗り越える切り札はどこに。

屈折と希望を描いた連作集。

 

朝井リョウ著『スペードの3

(2017年/講談社/裏表紙より)

 

主な登場人物

主な登場人物を自分なりにまとめてみました。

 

・江崎美知代(えさき みちよ)

香北つかさのファンクラブ「ファミリア」のトップを務める幹部。

小学生のときには学級委員を務めていたが、尾上愛季がクラスに転入してからは役割を取って替わられた。

他人よりも優れていることに優越感に浸りたい性格。

それ故に自分が大手化粧品メーカーの社員であると嘘を吐いている。

 

・佐々木由加(ささき ゆか)

香北つかさのファンクラブ「ファミリア」の幹部。

幹部の中では最も気が強い。

普段は調味料を製造し販売する会社の営業部で働いており、テンキーを叩く速さなら絶対に負けないと自負している。

 

・太田圭子(おおた けいこ)

香北つかさのファンクラブ「ファミリア」の幹部。専業主婦。

舞台上のつかさから自分たちがファンであることを証明する家服を発注をするなどの雑務をこなす。幹部の中ではキャリアが一番浅い。

あることをきっかけに「ファミリア」の制度に疑問を持ち、美知代や由加と対立する。

 

・明元むつ美(あきもと むつみ)

美知代の小学校時代の同級生。自分のルックスに極度のコンプレックスを感じており、小・中学生のときには様々な人からからかわれていた。

中学生になると友達となった木村志津香に誘われて演劇部に入り、美術班としてセットや勧誘ポスターを製作した。

 

・尾上愛季(おのうえ あき)

小学6年生の時に美知代、むつ美、壮太のいる小学校に転校してきた。

ピアノが弾けたことから、クラス合唱の伴奏に急遽選ばれた。

友だちからは「アキ」や「アッキー」と呼ばれている。

 

・五十嵐壮太(いがらし そうた)

美知代、むつ美、愛季の小学生のときの同級生。

クラスの中で1、2を争うほどの大きな身体の持ち主のため、女子からは恐れられている。

小学6年生の修学旅行の時に愛季に告白し、カップルとなった。

 

・木村志津香(きむら しづか)

むつ美の中学生時代の同級生で友だち。むつ美曰く、髪の毛が薄く量も少ない。

むつ美を演劇部入部に誘った。

 

 

・飯島(いいじま)

むつ美の中学生時代の同級生で友だちで、演劇部に所属している。

ミュージカルが好きで、雑誌やビデオをむつ美や志津香に見せていた。

香北つかさのファンクラブ「ファミリア」に所属している。

 

・坂町紳一郎(さかまち しんいちろう)

むつ美が所属する演劇部の部長で、中学2年生。

むつ美の描く絵を褒め、美術班に彼女がいることに安心している。

 

・村井実花子(むらい みかこ)

むつ美が所属する演劇部の先輩。「むらみか」と呼ばれている。

志津香が演技をする際、かつらを装着することを勧めている。

 

・明元修輔(あきもと しゅうすけ)

むつ美の弟。むつ美に漫画のキャラクターをノートに描いてもらうことを頼み、友だちには自分が描いたと自慢していた。

中学校進学のタイミングで、その嘘が友達にバレてしまう。

風貌はむつ美によく似ている。

 

・香北つかさ(こうほく つかさ)

かつて有名劇団の男役を務めた女優。ダンス、歌、演技どれをとってもトップクラスだが、女優になった目的や理由がないために劇団の同期である沖乃原円に嫉妬している。

 

・沖乃原円(おきのはら まどか)

かつて有名劇団の娘役を務めた女優。有名劇団が擁する演劇学校に入学する際、テレビ番組に密着取材されている。失踪した父親に観てもらいたいという思いを持って舞台に立ち続けていたが、くも膜嚢胞(くもまくのうほう)という病気を患ったため、引退を宣言する。

 

感想(ネタバレあり)

本作を読んで思ったのは、誰でも支配欲や劣等感、嫉妬心を持つんだなということです。

美知代はまさに支配欲の塊で、とにかく彼女はステータスを気にしていました。

自分の評価を上げるためにあえて自分よりも下の人間を作り出し、その子を庇う。

関わり辛い子と敢えて関わることで、自分が他とは違うということを見せつける。

だから学級委員の立場を死守したかったのだし、つかさの引退宣言がブログにアップされてもファンクラブを解散しないと言い放ちました。

ファンクラブを解体してしまえば、自分の評価を上げることはできないどころかステータスも失ってしまうからです。

あとは仕事のことで嘘を吐いていたことからも、彼女がステータスを気にしていることが読み取れます。

表面上はつかさを応援するためにファンクラブを運営していますが、本当は自分のことしか考えていない自己中心的な人物というわけです。

 

ファンクラブでも学級委員の立場を美知代が死守したがっていることを見抜いたのは誰かと言うと、これは驚きのむつ美でした。

本作では「アキ」と呼ばれている人物が2人いました。

一人は、尾上愛季。

だから、最初の方で飯島が「アキ」と呼んでいるとどうしても愛季がファミリアに入会したのかと思ってしまいます。

しかし、ファミリアに入会したのは尾上愛季ではなく、明元むつ美だったのです。

むつ美は自分の容姿に極度のコンプレックスを抱えていました。

それゆえに小学生の時にはからかわれていました。

友達と呼べる存在もいませんでした。

そんな彼女が最初にしたことは呼び名を変えることでした。

それから髪質を変えるために坊主に近い髪型にしたりもしました。

そうやっていろいろな努力をしたからこそ、見違えるほど綺麗になり、つかさに似ているとファミリアから言われるぐらいの容姿になりました。

 

つかさはというと、円に嫉妬を抱いていました。

自分よりも演技が下手なのにどうして注目されるのかと。

それは彼女の背景に物語があるからでした。

それに比べてつかさの背景には物語がありませんでした。

一度は物語を作りますがそれでも円には勝てず、ついにはブログで引退を宣言します。

アップしたブログをつかさは読み返しますが、自分ですら読み飛ばした部分があったことから、人間はほんの一部分を読み取って物語を作ってしまうということを理解します。

ブログを上げたタイミングで芸能人のブログが乗っ取られたことが判明し、マネージャーはつかさのブログも乗っ取られたと思い込み対応に追われるところで、本作品は終わります。

 

美知代、むつ美、つかさ。

3人がそれぞれに持つ、支配欲、劣等感、嫉妬心は誰にでも備わっているものだと思います。

一番質が悪いと思うのは支配欲だと個人的には思います。

劣等感や嫉妬心は自分を向上させるために役立つと思いますが、支配欲だけはあまり役立たない気がしました。

「自分さえ良ければ他人の自由を奪うのも正当化される」っていう感じが支配欲にはあるからです。

それに一部分しか見えていないのに他人よりも自分が秀でていると思うのは烏滸がましい考えだとも思いました。

 

美知代のような支配欲の塊にならないように気を付けて生きていきたいものです。

 

最後に

今回は朝井リョウさんの『スペードの3』の感想記事を書いていきましたが、いかがだったでしょうか。

本作は「スペードの3」「ハートのエース」「ダイヤの2」という順番で物語が進行していきます。

それぞれの物語の主人公は美知代、むつ美、つかさとなっています。

そして僕は「アキ」という名前にてっきり騙されてしまいました。

「アキ」という名前が出た直後に尾上愛季の話があったので、ファミリアに入ったのはてっきり尾上愛季かと思っていました。

物語の展開の仕方がとてもうまいです(僕が言うのも烏滸がましいですが……)。

 

以上、朝井リョウさんの『スペードの3』の感想記事でした。

最後までご覧いただき、ありがとうございました!

 

スペードの3 (講談社文庫)

スペードの3 (講談社文庫)

 

 

 

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