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遺体に残された数字の謎 ~麻見和史著『聖者の凶数 警視庁殺人分析班』読了~

にかどくです。

 

今回は『聖者の凶数 警視庁殺人分析班』を読了したので、こちらの感想を書いていきます。

聖者の凶数 警視庁殺人分析班 (講談社文庫)

 

著者紹介

本作の著者は、麻見和史さんです。

1965年、千葉県生まれ。

2006年『ヴェサリウスの柩』で第16回鮎川哲也賞を受賞しデビュー。

ドラマ化され人気を博した「警視庁殺人分析班」シリーズに『石の繭』『蟻の階段』『水晶の鼓動』『虚空の糸』『聖者の凶数』(本書)『女神の骨格』『蝶の力学』『雨色の仔羊』『奈落の偶像』『鷹の砦』『凪の残響』、「警視庁文書捜査官」シリーズに『警視庁文書捜査官』『永久囚人』『緋色のシグナル』『灰の轍』がある。

その他の著作に『水葬の迷宮 警視庁特捜7』『死者の盟約 警視庁特捜7』『深紅の断片 警防課救命チーム』など。

引用元:麻見和史著『聖者の凶数』(2016年/講談社/著者紹介より)

 

概要

顔と両腕を損壊された遺体が見つかった。

手がかりは、遺体の腹に記された謎の数字と、狩りの守護聖人のカードだけ。

連続殺人を予測した如月塔子ら警察の捜査もむなしく、第二の事件が発生。

またも記された数字は、犯人からの挑発なのか。

謎と推理の応酬の果てに彼女らが辿りついた、残酷で哀しい真相とは。

引用元: 麻見和史著『聖者の凶数』(2016年/講談社/裏表紙より)

 

主な登場人物

・如月塔子(きさらぎ とうこ)

警視庁刑事部捜査1課殺人犯捜査11係の巡査部長で、26歳。

低身長で童顔であることから、職場では子ども扱いされる。

物事に根を詰めてしまうタイプで、危なっかしい場面がある。

 

・鷹野秀昭(たかの ひであき)

警視庁刑事部捜査1課殺人犯捜査11係の警部補で主任。32歳。

塔子の教育係でもある。

100円ショップのアイデア商品の収集が趣味。

常にデジカメを持っており、現場や珍しいものを写真に収める記録魔。

 

・早瀬泰之(はやせ やすゆき)

警視庁刑事部捜査1課殺人犯捜査11係の係長。46歳。

捜査1課長の神谷と管理官の手代木と共に捜査指揮を行う。

胃薬を飲んでいる。

 

・門脇仁志(かどわき ひとし)

警視庁刑事部捜査1課殺人犯捜査11係の警部補で主任。37歳。

行動力には定評があるが、ときに強引な捜査を進めることがあることから、「ラッセル車」というあだ名がついている。捜査方針を巡って、手代木管理官としばしば衝突する。テレビ番組を調べるのが趣味。

 

・徳重英次(とくしげ えいじ)

警視庁刑事部捜査1課殺人犯捜査11係の巡査部長。53歳。

温厚な性格で且つ腹部がポッコリ出ているため、七福神の布袋さんのように見える。

インターネットの掲示板にアクセスすることが趣味。

 

・尾留川圭介(びるがわ けいすけ)

警視庁刑事部捜査1課殺人犯捜査11係の巡査部長。30歳。

お話し好きでお調子者。ホームステイをしたことがあるというだけで、帰国子女を自称している。

容姿が良いため女性警察官からは人気がある。

 

・神谷太一(かみや たいち)

警視庁刑事部捜査1課長。かつて如月塔子の父である如月功(きさらぎ いさお)とはコンビを組んで事件の捜査をしていた。

 

・手代木行雄(てしろぎ ゆきお)

警視庁刑事部捜査1課の管理官。細かいことを気にする性格で、門脇とは捜査方針で衝突している。

 

・小柴(こしば)

上野消防署予防課主任。

危険物の取り扱いについて、如月や鷹野に教えた。

 

・桐沢(きりさわ)

自動車販売整備会社社員。

如月や鷹野が上野消防署を訪れた際、消防車のメンテナンスをしていた。

 

・魚住研造(うおずみ けんぞう)

輸入商。

1つ目の事件である「東上野事件」の被害者。死因は窒息死。

頭部、両腕に薬傷があり、腹部には27と記されていた。

ノコギリ状のもので舌が切断されていた。

事件発生当初被害者が特定できなかったが、捜査を進めるうちに1つ目の事件の被害者が特定された。

 

・大月雄次郎(おおつき ゆうじろう)

事務機器販売会社の経営者。

2つ目の事件である「谷中事件」の被害者。死因は窒息死。

顔と両腕、右脚に薬傷があり、腹部には黒いペンで45と記されていた。

ナタ状のもので両手の十指が切断されていた。

 

・赤城庄一(あかぎ しょういち)

上野外科クリニックの院長。

3つ目の事件である「本所事件」の被害者。

死因は脳損傷

頭部、右腕、左腕、右脚、左脚に薬傷がある他、腹部には63と記されていた。

なお、頭部には銃弾を受けていた。

心臓移植が必要な娘がいる。

 

・種山常雄(たねやま つねお)

不動産会社の経営者。

死因は窒息死。

4つ目の事件である「御徒町事件」の被害者。

全身に薬傷があり、ピッケル状のもので頭部を殴られていた。

毛布には100と記されていた。

 

・橘久幸(たちばな ひさゆき)

雑誌販売員をしているホームレス。

ホームレスになる前は建設現場で働いていた。

娘がいるが、長らく会いに行けていないことを如月たちに話した。

 

感想(※ネタバレ含む)

本作の謎は腹部に記された数字の意味でした。

1つ目の事件では27、2つ目の事件では45、3つ目の事件では63、そして4つ目の事件では100。

当初捜査員たちは、これらの数字は被害者を特定できる番号だと推測しました。

しかし、塔子はこの番号は殺人の進捗状況を表す数字だと推測しました。

また、舌を切られていたり、指を切断されていたりもしたので、捜査員たちは連続猟奇殺人だという推測もしていました。

さらに遺体の頭部はどれも薬傷によって潰されている状態であり、1つ目の事件の被害者を特定するのにかなり時間がかかっていました。

捜査が難航する中、ヒントになったのは塔子があるトラブルで偶々関わったホームレスの言葉でした。

そのホームレスは火傷したとことろを気にしており、ポロっと「硫酸で火傷するよりはマシ」と言っていたのでした。

その言葉を聞いた塔子は薬傷と数字に関係があるのではないかと思い調べると、遺体の数字は「9の法則」を表していることが判明しました。

この法則は、火災などでどれくらい火傷を負ったのかを素早く計算するためのものです。

体全体を100として、頭、左腕、右腕はそれぞれ9%、左脚、右脚はそれぞれ18%、体幹前面、後面もそれぞれ18%、陰部が1%として計算されます。

なお、火傷を体の30%以上負うと、命が危ないと判断されているようです。

 

この法則に当てはめると、

第1事件は頭部(9%)+両腕(18%)=27(%)、

第2事件は頭部(9%)+両腕(18%)+右脚(18%)=45(%)、

第3事件は頭部(9%)+両腕(18%)+両脚(36%)=63(%)、

第4事件は頭部(9%)+両腕(18%)+両脚(36%)+体幹前面(18%)+体幹後面(18%)+陰部(1%)=100(%)

という事実が見えてきます。

 

そしてこの知識がありそうな人間は限られてきます。

さらに舌や指を切断した道具は万能斧ではないかと塔子は推測します。

万能斧は火災現場でやむを得ず建物を破壊する際に消防官が使用します。

さらに被害者には索状痕があり、消防隊や救助隊が使用するロープを使ったのではないかと推測します。

要するに、塔子は消防官が今回の事件の犯人なのではないかと推測しました。

読者もここまでヒントを出されたら、消防官が犯人なのではと思います。

しかし、鷹野がその可能性を否定しました。

なぜなら、消防官は24時間ずつの交替勤務のため、現役の消防官なら2日連続で事件を起こすことができません。

犯人が消防官ではないとしたら、一体誰なのだろうか……。

 

鷹野の一言でまた謎が生まれてしまいますが、実はヒントは随分前に出ていました。

硫酸は劇物なので届け出が必要ですが、届け出無しで入手することができてしまう職業があるのです。

(ただし、原液のままの入手ではありません。)

犯人については本作をこれから読む方のために伏せておきます。

9の法則を犯人が持ち出した理由にも注目して欲しいと思います。

 

 

犯人が逮捕された後、新たな事実が判明します。

被害者の死亡推定時刻から4つ目の事件発生後に3つ目の事件が発生していることが判明しました。

つまり、模倣犯が3つ目の事件を起こしていたということです。

その模倣犯の正体ですが、ちょっと複雑でした。

事件を起こした理由も、とても切なかったです。

もっと他の手段はなかったのだろうかと思いました。

模倣犯の正体についても、本作をこれから読む方に楽しんでもらう為に明かしません。

 

本作もトリックが非常に面白かったですし、登場人物の過去に少し触れられているという点も良かったです。

門脇の失敗談は、誰にでもありそうな気がしましたし、僕が警察官だったとしたら同じ失敗をしていたと思います。

人を疑ってかかるというのが苦手で、人を信じやすい性格なんですよね。

これでも警察官を目指した人間なのですが、もしかしたらその性格を見抜かれたんでしょうかね。

(たぶん違うと思いますが……。)

話が脱線してしまいました。

今回も塔子が大活躍しており、いつか鷹野と同じような推理力を持つのではないかと思います。

次の作品も塔子の活躍に期待したいと思います!

 

最後に

今回は麻見和史さんの『聖者の凶数 警視庁殺人分析班』の感想記事を書きましたが、いかがだったでしょうか。

9の法則、万能斧、ロープといった要素を出すことでミスリードをさせられます。

このミスリードを回避して真実に辿り着けた人は、推理力がずば抜けて高いのではないかと思います。

僕は残念ながら、上手く回避できませんでした。

(硫酸のところは何となくわかったのですが……。)

次回作である『女神の骨格 警視庁殺人分析班』も期待して読もうと思います。

 

以上、麻見和史さんの『聖者の凶数 警視庁殺人分析班』の感想記事でした。

最後までご覧いただき、ありがとうございました!

 

☆宜しければ、記事に対する感想をコメントしていただけると嬉しいです☆

 

聖者の凶数 警視庁殺人分析班 (講談社文庫)
 

 

『石の繭 警視庁殺人分析班』の感想記事☟

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『蟻の階段 警視庁殺人分析班』の感想記事☟

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『水晶の鼓動 警視庁殺人分析班』の感想記事☟

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『虚空の糸 警視庁殺人分析班』の感想記事☟

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『女神の骨格 警視庁殺人分析班』の感想記事☟

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『蝶の力学 警視庁殺人分析班』の感想記事☟

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