にかどくログ

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明日はあなたかもしれない……。 ~秦建日子著『サイレント・トーキョー And so this is Xmas』読了~

にかどくです。

 

今回は『サイレント・トーキョー And so this is Xmas』というクライムサスペンス小説を読了したので、こちらの感想を書いていきます。

2020年12月4日に公開された映画『サイレント・トーキョー』の原作本です!

 

サイレント・トーキョー And so this is Xmas (河出文庫)

 

 

著者紹介

本作の著者は秦健日子(はた たけひこ)さんです。

ドラマ・映画『アンフェア』の原作を書いた有名な方です。

小説家・ 脚本家・演出家・映画監督。

1968年生まれ。97年より専業の作家活動。

2004年『推理小説』で小説家デビュー。

同作は〈刑事 雪平夏見〉シリーズとして続編とともにベストセラーとなり、『アンフェア』としてドラマ&映画化。

他著書に『ダーティ・ママ!』『らん』『殺人初心者』『KUHANA!』など。

脚本にテレビドラマ『天体観測』『ドラゴン桜』『ダンダリン』『そして、誰もいなくなった』など多数。

脚本&監督作品に『クハナ!』『キスできる餃子』『ブルーヘブンを君に』。

作・演出を手掛けた舞台に『月の子供』『らん』など。

 

秦建日子著『サイレント・トーキョー And so this Xmas』

(2019年/河出書房新社/カバー袖より)

 

概要

「これは戦争です」

12月22日、クリスマスを目前ににぎわう東京・恵比寿で爆破テロが発生。

すぐに届いた犯行声明で、犯人は日本国首相との生放送でテレビ対談を要求、受け容れられなければ次は渋谷で無差別爆破テロを起こす、と予告する。

対する首相はテロには屈しないと拒否。

そして翌日、最悪の事態が……!

圧倒的なリアリティとスケールで送る衝撃のクライムサスペンス!

映画原作。

 

◎解説=似鳥鶏

 

秦建日子著『サイレント・トーキョー And so this Xmas』

(2019年/河出書房新社/裏表紙より)

 

主な登場人物

・来栖公太(くるす こうた)

大学4年生でKXテレビの情報番組『ニュース・ドクター』のスタッフとしてアルバイトをしている。正規の就職活動が全敗していることからスタッフの誰かから契約社員にならないかと声をかけられることを目標としている。爆破予告のあった恵比寿へ取材に行ったことで爆破事件に巻き込まれる。

 

・ヤマグチアイコ

主婦。恵比寿へ買い物に行ったところ、爆弾を仕掛けられているベンチに座ってしまい、以後爆破事件に巻き込まれる。

 

・須永基樹(すなが もとき)

高卒のスタープログラマー。30歳。

スマホアプリ開発の会社を自ら経営しており、恵比寿にオフィスを構えている。

長年失踪している父親を探している。

 

・印南綾乃(いんなん あやの)

食品メーカー勤務の会社員。30歳。

合コン後に須永からLINEで連絡があり、食事に誘われる。

20歳の時から付き合っていた恋人とは30歳になったタイミングで別れ話を切り出された。

 

・高梨真奈美(たかなし まなみ)

食品メーカー勤務の会社員。

社内に20歳年上の不倫相手がいる。

ネイルだけでなく、髪、化粧、体型にも女子力が抜かりない。

 

・朝比奈仁(あさひな じん)

片田舎のカフェの料理人。過去には六本木のビストロに勤めていた。

ショーンという恋人がいた。

 

・世田志乃夫(せた しのぶ)

渋谷署の交番勤務の警察官で警部補。

爆破事件の捜査に参加する。

警視庁公安部の鈴木学の娘は元妻。

 

・泉大輝(いずみ だいき)

渋谷署の生活安全課少年係に所属している巡査。

爆破事件の捜査に世田と共に参加する。

泉が交番勤務の際、世田は指導係だった。

 

・鈴木学(すずき まなぶ)

警視庁公安部の警視監

恵比寿の爆破事件のレポートを読み、事の重大さを認識し捜査本部の設置を主張した。

以後爆破事件の指揮を執る。

 

・高沢雅也(たかざわ まさや)

KXテレビの情報番組『ニュース・ドクター』のAD。

来栖と共に恵比寿の爆破予告現場へ取材に行くが、アイコが座っていたベンチに座ったことで身動きが取れなくなる。

 

感想(※ネタバレを含みます。)

本作を読んで誰しもがテロの犠牲者になりうるという恐怖を覚えました。

本作ではまず最初に恵比寿の爆破事件では、来栖とヤマグチが爆発物がベンチに仕掛けられていることを伝えるために、警備員に知らせたものの最初は信じてもらえませんでした。

しかし当の警備員は何の根拠もないまま冗談だと思い、2人を追い返そうとします。

そんな中で1回目の爆発が起きます。

2人の言っていることが本当だと信じた警備員は館内放送で避難を呼びかけます。

館内放送がかかっている中で、逃げられないのは来栖と共に取材に来た高沢。

高沢は重量センサーが機能している爆弾が取り付けられているベンチに腰を掛けていたからです。

1回目の爆発でゴミ箱が吹き飛んだことで、彼も本物の爆弾がベンチに仕掛けられているという恐怖を覚えました。

やがて爆発物処理班が到着すると、高沢が座っているベンチの爆弾の処理を開始します。

液体窒素で爆弾を凍結しようとしますが、処理中に爆発してしまいます。

なんと酷いことを、と思いますが、高沢は精神を損傷しただけで無事でした。

(これを無事と呼べるのかどうか怪しい……。)

爆弾処理班の人員も精神的に損傷しただけで無事でした。

なぜなら、この爆弾は爆音と閃光が発生するだけのものだったからです。

殺傷能力0の爆弾でしたから、警視庁の上層部はこの事件の捜査本部を設置することは国民に不安感を与えたり、愉快犯を増長させるとして消極的でした。

しかし事の重大さに気付いている警視庁公安部長の鈴木は捜査本部を設置することを強く主張しました。

 

渋谷署に捜査本部が設置された直後、犯人の指示に従って来栖公太が次の爆破予告YouTubeやメディアを通して発表します。

生放送にて日本国首相と1対1の対話が実現しない場合は、12月23日の18時30分に渋谷のハチ公前を爆破する、との犯行声明でした。

しかし、首相はテロには屈しないという姿勢を見せ、犯人の要求を拒否しました。

これが、最悪の事態を招くことになります。

 

爆破予告がされているにも関わらず、12月23日の渋谷は人でごった返していました。

なぜなら、爆破予告をみんなが「質の悪いイタズラ」だと思っていたからです。

恵比寿の爆破では死者が出なかった。

だから今回も死者が出るような爆弾は仕掛けられていないだろう

少なからずそう考えている人はいたのだと思います。

でも実際は爆弾は仕掛けられていました。それも人目の付きやすいところに。

爆破時刻寸前で爆発物処理班が爆弾の存在に気付きますが、時すでに遅し。

渋谷のスクランブル交差点は一気に吹き飛びました。

 

渋谷のシーンは本当に恐ろしかったです。

というのも、ここは誰もが自分を投影できるような仕組みになっているからです。

主な登場人物としては紹介されていないモブキャラ的な立場の人たちが、どうして渋谷に行くのかを書いているからです。

仕事のために渋谷に来た人。

家出をした記念として渋谷に来た人。

恋人に会うために渋谷に来た人。

爆破騒ぎをネタにYouTubeのネタにするために渋谷に来た人。

そしてモブキャラたちは爆発に巻き込まれて、無残にも命を落とします。

ハチ公の破片が脳に突き刺さって即死する人や、爆風によってコンクリートに叩きつけられ即死する人などなど。

モブキャラ的な人物に触れることで、自分たちも無差別に命を奪われる可能性があるということを示唆しているような気がしましたし、日本人の危機意識が希薄になっているということを見せ付けられたような気さえしました。

 

そしてこの爆破事件の犯人は意外な人でした。

この人が犯人だろうと推測して読んでいましたが、僕の推測はまんまと外れました。

なぜこの人が爆破事件を起こそうと思ったのか。

しっかりとした理由がありましたが、ここでは伏せておきます。

こんな文章を見ると犯人は最終的には捕まったんだろうなと思いますが、実は生きています。

警察も犯人を見誤っているせいで、一連の爆破事件が幕を閉じたと思っています。

つまり、一般人はまだ爆弾の脅威に晒されている状態なのです。

この終わり方には本当に背筋が凍りました。

 

最後に

今回は秦建日子さんの『サイレント・トーキョー And so this is Xmas』の感想記事を書いていきましたが、いかがだったでしょうか。

日常の平和はいとも簡単に崩れ去るということを実感させられましたし、テロの脅威は決して他人事ではないということも気付かされます。

もしかしたら自分も登場人物たちのような立場になる日がいつか来るかもしれない

来栖公太のように犯人の駒としてテロに関わってしまうかもしれないし、真奈美や綾乃のように爆発に巻き込まれて大怪我をするかもしれない。

下手すればモブキャラのように絶命するかもしれない。

僕たちは決して架空の物語の読者ではいられないのです。

映画もきっと一緒です。いち観覧者ではいられないはずです。

 

映画では佐藤浩市さんや石田ゆり子さん、西島秀俊さんなど豪華俳優陣が出演されています。

原作と映画とでは若干登場人物が異なるようです。


2020年12月4日(金)公開映画『サイレント・トーキョー』特報

 

機会があれば映画も観てみたいですが、いまの状況だと難しそうですね(^_^;)

レンタルが開始されるまで待とうかなと思っています。

 

映画を観た方は原作本も読んでみてはいかがでしょうか。

きっと面白さが倍増するはずです。

 

以上、秦建日子さんの『サイレント・トーキョー And so this is Xmas』の感想記事でした。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

 

☆宜しければ、記事に対する感想をコメントしていただけると幸いです☆

 

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