にかどくです。
今回は『世界でいちばん長い写真』を読了したので、こちらの感想を書いていきます。
著者紹介
本作の著者は誉田哲也さんです。
1969年、東京都生まれ。学習院大学卒。
2002年、『妖(あやかし)の華』で第2回ムー伝奇ノベル大賞優秀賞を受賞。
’03年には、『アクセス』で第4回ホラーサスペンス大賞特別賞を受賞している。
主な著作に、『ストロベリーナイト』『ソウルケイジ』『シンメトリー』『インビジブルレイン』『感染遊戯』(以上、光文社刊)、『ジウ』(全3巻)『国境事変』『あなたの本』『幸せの条件』(以上、中央公論新社刊)、『武士道シックスティーン』『武士道セブンティーン』『武士道エイティーン』(以上、文藝春秋刊)、『ヒトリシズカ』(双葉社刊)、『ドルチェ』(新潮社刊)、『あなたが愛した記憶』(集英社刊)などがある。
誉田哲也著『世界でいちばん長い写真』
(2012年/光文社/カバー袖より)
概要
人気者だった親友の洋輔が転校してから、宏伸の毎日は冴えない感じだ。
特にやりたいこともなく、クラブ活動の写真部でも、部長からしかられてばかり。
そんなある日、祖父の古道具屋で、大砲みたいにごつい不思議なカメラに出合う。
世界一長い写真が撮れるカメラって⁉
その日から、宏伸の日常がきらめき始める。
ワクワクして胸にジンとくる、青春小説の新たな傑作!
誉田哲也著『世界でいちばん長い写真』
(2012年/光文社/裏表紙より)
登場人物
主な登場人物をご紹介します。
・内藤宏伸(ないとう ひろのぶ)
引っ込み思案の中学3年生。写真部所属。15歳。
親友の洋輔が引っ越してからは、元気がない。
ある日、祖父の竹中芳郎が営む「リサイクルショップ竹中」で不思議なカメラ、通称「グレート・マミヤ」を見つけ、それを用いて写真を撮ることで心境が変わっていく。
クラスメイトや三好からは「ノロブー」と呼ばれている。
・竹中温子(たけなか あつこ)
宏伸の従姉。宏伸からは「あっちゃん」と呼ばれている。21歳。
言葉遣いは乱暴だが、美人。
父親は「リサイクルショップ竹中」を営む竹中芳郎で、彼の依頼によって東京の博物館から「グレート・マミヤ」を店に運び出した。
宏伸がそのカメラを見つけてからは、撮影に度々協力した。
・三好奈々恵(みよし ななえ)
宏伸のクラスメイトでクラス委員。写真部部長。
写真をなかなか提出しない宏伸を叱っている。
女子の中でもリーダー格として存在しており、気が強い。
「グレート・マミヤ」の存在を知ってからは、ある計画を達成するために宏伸をサポートした。
・竹中(たけなか)
宏伸の祖父であり、温子の父。74歳。
機械いじりが好きで鉄工所をしていたときの道具が残っていたことから、廃品を集めて修理した後に商品として売る店を始めた。
失踪癖があるため、不在の際には温子に店番をしてもらっている。
東京の博物館から「グレート・マミヤ」を持ち主である松本三郎に頼まれて引き取った。
・宮本(みやもと)
ミヤモト写真館の店主。
宏伸と温子に「グレート・マミヤ」の撮影方法などを教え、宏伸が「グレート・マミヤ」で撮影した写真を現像し、アドバイスしたりした。
・コイデ トモヤ
温子の高校の同級生。
父親と共に農作物を作っている。
温子からの依頼で宏伸に撮影の素材としてヒマワリ畑を提供した。
・安藤エリカ(あんどう えりか)
3年B組の生徒で陸上部員。
宏伸が密かに憧れを抱いている。
宏伸が撮ったヒマワリ畑の写真を観てから、三好と共にある計画を達成するために宏伸をサポートした。
・松本三郎(まつもと さぶろう)
「グレート・マミヤ」(360度パノラマカメラ)を開発した人物で且つ持ち主。76歳。
世界一長い写真のギネス記録保持者で、360度カメラを4台製作した。
ギネス記録更新に挑戦することを三好や温子に提案され、快く引き受ける。
感想(※ネタバレ含みます)
一言で本作の感想を表すとすれば、「これぞ、青春!」と言うようなそんな小説でした。
本作の主人公である宏伸がとにかく暗いです。
宏伸が学校生活を楽しめたのも、親友である洋輔が引っ張ってくれたからだということが良く分かります。
この宏伸は従姉の温子からブレイクダンスを少しだけ習っていたため、洋輔から学校で披露してみろというように勧められ、披露します。それも得意げに、です。
クラスメイト達は宏伸のブレイクダンスを観てその時は盛り上がったようでした。
しかし洋輔が引っ越した後、卒業記念イベントをクラスで決める際に柴田明という人物がクラスメイト達に「宏伸にブレイクダンスを踊ってもらう」という提案をしますが、彼らは何の反応も示しませんでした。
つまり、誰も宏伸のブレイクダンスに興味を持っていなかったということがわかります。
洋輔の煽り方が上手かったからこそ、宏伸のブレイクダンスを観たに過ぎなかったのです。
洋輔が引っ越してから宏伸は無気力に過ごします。
写真部の活動として写真5枚を提出するように言われても、提出期限は守らない。
写真を撮っても、部長の三好からしたら写真と呼べるクオリティではありませんでした。
しかしそんな宏伸を変えたのが、温子が東京の博物館から運んできた「グレート・マミヤ」でした。
360度のパノラマ写真が撮れるカメラ、通称「グレート・マミヤ」に興味を持った宏伸はミヤモト写真館に赴き、撮影方法やフィルムのセットの仕方などを教えてもらいます。
そして、記念すべき1枚目を公園で撮りますが、失敗します。
その失敗が余程悔しかったみたいで、時間があれば「グレート・マミヤ」の操作を練習していました。
自分の部屋で360度回ってみたり、教室で360度回ってみたり。
そして、ヒマワリ畑を被写体として「グレート・マミヤ」で撮影すると、感動的な写真が撮れました。
この「グレート・マミヤ」は後に持ち主である松本三郎に返却しましたが、彼はギネス世界記録となった約50mのパノラマ写真に満足していませんでした。
なぜなら、松本三郎が所持している360度パノラマカメラは理論上では150mのパノラマ写真を撮れるからです。
でも150mの360度パノラマ写真を撮るには、高齢の彼が一人で行うにはとても厳しいものでした。
そこで三好や温子が彼にパノラマ写真撮影を提案し、松本は現像まで最終的に手伝ってくれるならという条件で快く引き受けました。
それから宏伸は卒業記念イベントとしてパノラマ写真撮影を行うことをクラスに提案します。
三好が提案しても良さそうな気がしましたが、パノラマカメラのことを宏伸は三好よりも知っています。
それに実際に撮影もしているわけなので、宏伸の方がパノラマ写真について詳しい説明ができると判断したのかもしれません。
最初こそは上手く説明できませんでしたが、次第に周りもパノラマ写真撮影に興味を持ち始め、いつの間にか彼は卒業記念イベントの実行委員長に選ばれました。
それからは宏伸が中心となってパノラマ写真を撮る日程だとか、どこにカメラを置いて撮影するかなど細かいことを調整していきます。
引っ込み思案だった宏伸が最終的にはみんなを引っ張るリーダーに変化したのはとても感動的でした。
人間って何か一つ熱中できることがあると、無理だと思っていたこともこなせるんだなと思いました。
がむしゃらに頑張る宏伸がとても逞しく見えました。
最後の最後で温子がとても深いことを宏伸に対して言っています。
「んなのぉ、なんだっていいんだよ。お前はダンスだってできるし、カメラだってできるし、あたしと違って、学校の勉強だってできる。お前なら、なんだってできるさ。いや、ほんとはみんな、なんでもできるのに、やらないだけなんだよ。やろうとしてないだけなんだよ。そういう奴、絶対多いよ」
誉田哲也著『世界でいちばん長い写真』
(2012年/光文社/289頁7~10行目)
これは宏伸だけでなく、やりたいことがあるのにやる前から諦めてしまっている僕たち読者にも投げかけられているようなセリフに感じました。
(全読者がやりたいことを諦めているわけでは決してありませんが。)
この言葉はギネス世界記録更新に挑戦したからこそ言えることなのかもしれませんが、やる前から諦めるのは勿体ないと激励してくれているのかもしれません。
みなさんも、やりたいことがあったらとことん挑戦してみましょう!
(お前が言うなって感じですよね。ゴメンナサイ)
最後に
今回は誉田哲也さんの『世界でいちばん長い写真』の感想を書いていきましたが、いかがだったでしょうか。
本作で登場するパノラマカメラは山本新一が製作した360度パノラマカメラをモデルとしているようで、実際に山本さんも「世界一長い写真」のギネス認定を2度にわたって受けられているそうです。
実際はパノラマカメラを12回転して撮影し、145mの写真が出来上がったそうです。
現像するのもきっと大変だったんだろうと思いますし、それをやってのけたのがとても凄いと思いました。
また本作は2018年に俳優の高杉真宙さんが主演で映画化されていたようです。
映像作品もなかなか面白そうなので、こちらも機会があればチェックしてみたいと思います!
ちなみに、本作は日向坂46とコラボレーションした「日向坂文庫2021 冬の書店デート」フェアの1冊として選ばれています。
このフェアは対象書目がなくなり次第終了とのことなので、日向坂46のスペシャルカバーをGETしたい方は、手に取ってみてください!
ちなみに本作は小坂菜緒さんがスペシャルカバーを担当しています。
(噂によると本作が日向坂文庫2021の中で一番売れているらしいとか……。)
以上、誉田哲也さんの『世界でいちばん長い写真』の感想記事でした。
最後までご覧いただき、ありがとうございました!
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