にかどくログ

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ある朝、虫に変身していたら? ~フランツ・カフカ著『変身・断食芸人』読了!~

読書大好きのにかどくです!

フランツ・カフカさんの『変身・断食芸人』を読了したので、今回はこちらの感想を書いていきたいと思います。

なお、1冊の書籍に『変身』と『断食芸人』の2篇が収録されているため、書籍のタイトルが『変身・断食芸人』となっています。

変身・断食芸人 (岩波文庫)

 

 

著者紹介

本作の著者は、フランツ・カフカさんです。

1883年に現在のチェコで出生したドイツ語作家です。

カフカさんはプラハユダヤ人の家庭に生まれ、法律を学んだ後に保険局に勤めながら作品を執筆していたそうです。

どこかユーモラスで浮ついたような孤独感と不安が溢れ出す、夢の世界を想起させるような作風が、カフカさんの作品には多いそうです。

他著としては、『審判』(または『訴訟』)、『城』、『失踪者』があります。

この三作はいずれも未完に終わっており生前には発表されていませんが、友人のマックス・ブロートさんによって発見されたおかげで、出版に至っています。

この三作は実存主義的見地から世界的なブームになったそうです。

カフカさんは1924年40歳という若さで亡くなられています。

 

概要

『変身』、『断食芸人』のそれぞれの概要は以下の通りです。

変身

営業マンのグレゴール・ザムザがある朝目覚めると、毒虫になっていることに気付く。

 

仕事のために家を発つ時間になっても一向に姿を見せないグレゴールを家族が心配する中、彼が勤める会社の部長が彼の家に訪ねてくる。会社でのポストを危うくさせたくないグレゴールは自分の部屋から出ると、グレゴールの変わり果てた姿に母親、父親、部長は驚愕する。部長は逃げるように家を出ていき、グレゴールは部長を追跡しようとしたが父親に阻まれ、自室へと戻る。

 

虫に変身してしまったグレゴールに対して、妹のグレーテは食事の世話をしたり、部屋の掃除をしていた。しかし、稼ぎ頭がいなくなってしまったザムザ一家は生活苦に追い込まれていったため、妹のグレーテは働きに出ることになったばかりでなく、家の空き部屋に3人の下宿人を入れて、生活をカバーしていた。

 

しかしある時、変わり果てたグレゴールの姿を下宿人に発見されてしまう。下宿人はザムザ一家から離れようとするが、下宿人がいなくなればザムザ一家の生活はより厳しくなってしまう。そして遂に妹のグレーテは、グレゴールがいなくならなければならないことを家族に向かって叫ぶ。

 

家族全員に見放されたグレゴールは、ある日ひっそりと息を引き取る。グレゴールが亡くなったことを確認すると、家族全員が十字を切って神に感謝する。そしてこれを機にザムザ一家は、グレゴールが見つけてくれた家よりももっと良い場所へと希望を胸に抱いて発つのであった。

 

断食芸人

断食芸はかつて大人気の芸であり、当時は町をあげて断食芸の噂で持ちきりだった。断食芸人は格子の付いた檻の中で、敷き詰めた藁の上に座ってじっとしている。檻の中には他にも、芸人の家財道具である時計とグラスに入った水があった。断食芸人は時折水で口を湿らす他は何も口にせず、また、隠れて食べ物を口にしないようにと常時見張りを付けた。興行は決められた日数である40日間続けられ、それが終わると音楽と共に人々の間に出迎えられる。しかし、断食芸人は40日で断食をやめなければならないことに不満を抱いていた

 

断食芸の人気が衰退した今、断食芸人は相棒の興行主と袂を分かち、サーカス一座と契約を結んだ。断食芸人の檻は動物小屋と共に並べられたものの、人々は珍しい動物を見に来ているために、断食芸人には全く興味を示さない。断食芸人はすっかり忘れ去られてしまうが、思う存分断食を行うことができていた。

 

ある日、監督が断食芸人の檻に気が付き、藁屑を掻き出すと、断食芸人は未だに断食を続けていた。問いかける監督に対して、断食芸人は自身に合った食べ物を発見できなかったことを述べると息絶える。断食芸人が藁と共に葬られると、その檻には一頭の若い豹が入れられたのだった。

 

感想

感想についても『変身』と『断食芸人』の両方を書いていきます。

『変身』について

 

グレゴールは家族に良いように使われて死んでいったように僕には見えました。

ザムザ一家が何不自由なく生活できていたのは、営業マンとして汗水垂らして働いているグレゴールがいるからです。グレゴールは営業という仕事にうんざりしているものの、「家族を路頭に迷わせるわけにはいかない」というような優しさを持っているからこそ、真面目に働いていたのだと思います。

 

でもグレゴールが虫に変身した途端、家族はグレゴールに対して冷たくします。

たとえば、父親に関しては部長を追跡しようとするグレゴールを自室に戻るように急き立てたり、林檎をグレゴールに向けて思いっきり投げつけたりしました。人間の姿じゃなくなったグレゴールをとにかく邪魔者扱いしているように見えました。

妹のグレーテに関しても同じです。虫に変身してしまったグレゴールに優しく接しているのは良かったのですが、彼女も次第にグレゴールを邪魔者扱いします。グレゴールの部屋から使われなくなった家具を運び出そうとします。グレゴールが部屋中を移動しやすいようにという理由付けをしていますが、やはり虫になってしまったグレゴールは邪魔だったのでしょう。それどころか、僕には家具を部屋からなくしてしまうことで、グレゴールの存在を最初からなかったものにしようとしているのではないかと思いました。最終的には、自分たちの生活を危惧したグレーテが虫になったグレゴールを処分しようとしています。何の恩恵ももたらさない虫に変身してしまったグレゴールの存在が邪魔だったのでしょう。

 

グレゴールが人間として懸命に働いていた時は温かく接していたのに、虫に変身してしまい働けなくなったことがわかると冷遇し、排除しようとする。グレゴールは家族に振り回された悲しき青年だと思いました。そして、この家族は人間としてのグレゴールしか愛せないことも判明したように思います。どんな姿であってもグレゴールであることに変わりはないのに、です。

 

もし僕が明日の朝、人間に多大な不快感を与える虫になってしまったとしたら、家族はどう接してくるのでしょうか。どうして虫になってしまったのかを一緒に考え人間に戻す方法を探してくれるのでしょうか。それとも、虫になってしまった僕を素直に受け止めてくれるのでしょうか。はたまた殺虫剤で殺してしまうのでしょうか。僕という存在を家族がどのように捉えているかで対応は変わってくるのだろうと思いますが、殺虫剤で殺されるという結末だけは勘弁したいです。

 

『断食芸人』について

これは人気があろうとなかろうと、自身の芸に誇りを持って臨んでいるという印象を受けました。40日間で断食をやめなければならないことに不満を持っていることから、このことが伺えると思います。40日以上も断食できるということは、精神力がとても強い人間なのだなとも思います。どんなに過酷でも耐え忍ぶことができる断食芸人は、バリバリの体育会系なのかもしれません。

 

しかし一方で、この断食芸人は自身の芸に固執し過ぎたとも言えます。世間が断食芸に興味を示さなくなった以上、他の芸を会得する必要があったと思います。でも他の芸を会得しようとすれば、誇りを持って臨んできた断食芸を捨てなければならない。断食芸をどれほどやっていたのかは推測できませんが、年数が長ければ長いほど自身の芸を捨てるのは、誇りが邪魔をしてなかなか難しいでしょう。それで注目を集めていたのだから余計です。人間は長く親しんでいたものを容易く捨てることはできないということをまざまざと見せつけられたように感じました。

最後に

今回はフランツ・カフカさんの『変身・断食芸人』の感想を書いていきましたが、いかがだったでしょうか。

 

『変身』ではグレゴールがどんな虫になったのかは特定されていません。人によってはゴキブリだとか、何かの幼虫だとかを想像すると思います。僕は、ムカデに変身したと思いました。毒を持ってるし、細い足をいくつも持っているのでうってつけです。

 

みなさんは、グレゴールが変身した虫をどんな虫に特定するのでしょうか。とても気になります。

 

この『変身』は様々な翻訳が存在するので、読み比べても面白いかもしれません。

ちなみに僕が読んだのは、山下肇さん、山下萬里さんが翻訳したものです。

 

以上、フランツ・カフカ著『変身・断食芸人』の感想記事でした。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

変身・断食芸人 (岩波文庫)

変身・断食芸人 (岩波文庫)

  • 作者:カフカ
  • 発売日: 2004/09/16
  • メディア: 文庫