にかどくです。
今回は『怪談のテープ起こし』を読了したので、こちらの感想を書いていきます。
タイトルから分かる通り、今回もホラー系の作品です。
著者紹介
本作の著者は、三津田信三(みつだ しんぞう)さんです。
奈良県出身。編集者を経て2001年『ホラー作家の棲む家』でデビュー。
『厭魅の如き憑くもの』の、本格ミステリと怪異譚を融合させた独自の作風が話題を呼び「刀城言耶シリーズ」として多くのファンを摑む。
10年、同シリーズ6作目に当たる『水魑の如き沈むもの』で第10回本格ミステリ大賞を受賞。
ほかに「作家三部作シリーズ」、「サ行シリーズ」、「死相学探偵シリーズ」、「幽霊屋敷シリーズ」などのシリーズがある。
近刊に『魔邸』『碆霊の如き祀るもの』『犯罪乱歩幻想』など。
引用元:三津田信三著『怪談のテープ起こし』(2019年/集英社/カバー袖より)
概要
自殺する間際にメッセージを録音して残す人がいる。
それを集めて記事にしないか?
編集者時代の三津田に企画を提案したライターが突然失踪。
後日、三津田の元に届いた1本のテープには何が。
カセットやMDに録音された体験談に材を取った6つの怪異譚と、
それらを連載し本になるまでの、
担当編集者との裏話的なエピソードから成る作品集。
この物語を読むあなたは恐怖を「体感」することになる。
引用元:三津田信三著『怪談のテープ起こし』(2019年/集英社/裏表紙より)
主な登場人物
主な登場人物をまとめてみました。
・三津田信三(みつだ しんぞう)
『怪談のテープ起こし』の著者。
編集者時代にライターの吉柳から、自殺する人がメッセージを吹き込んだMDやカセットテープを受け取る。MDやカセットテープは三津田が『怪談のテープ起こし』を執筆する際に編集者の時任に託した。
時任に霊障が起き始めた際、MDやカセットテープを聴くのをやめるように言った。
・時任美南海(ときとう みなみ)
「小説すばる」の担当編集者。仮名。
洋の東西を問わずホラー関係の小説をよく読む。
ネタ探しのために、三津田から受け取ったMDやカセットテープを聴取するが、徐々に霊障が起き始める。
・岩倉正伸(いわくら まさのぶ)
時任美南海の上司。仮名。
・吉柳吉彦(きりゅう よしひこ)
三津田の5つ年上の元編集者。現フリーライター。
自殺者が死ぬ間際に親族に向けてメッセージを録音したカセットテープを多数所有している。
感想(※ネタバレ含む)
この小説は以下の6つの短編からなっています。
(ナンバリングは勝手にしました。)
1.死人のテープ起こし
2.留守番の夜
3.集まった四人
4.屍と寝るな
5.黄雨女
6.すれちがうもの
「死人のテープ起こし」は、自殺者が死の間際に親族に向けて残したメッセージを文字に起こす話ですが、サンプルCのものが不気味です。
サンプルCに登場する男性は人気のないところで自殺するために青木ヶ原樹海に行ったのですが、そこで綺麗な女性と会話をしています。
ところが、その会話は男性が一方的に話しているだけで、女性の声は一切録音されていませんでした。
さらに、男性とは逆の方向に進んでいた女性が、なぜか男性の行く先に再び姿を現わします。
テープには最終的に女性のものと思われる声が微かにするとのことですが、この言葉が中々に恐ろしいです。
「かえれませんよ」
無感情でこの言葉が出たのだろうと思いますが、場所が場所なだけにかなり怖いです。
「留守番の夜」は女子大学生がOGに紹介してもらったアルバイトとして、他人の家で留守番をするという話。
アルバイト先の家の住人が奇妙で、一方は3Fにいる老人は生きており顔を合わせないで欲しいと言ったり、もう一方は既に死んでいると言っていたり……。
本当に奇妙です。
そして自分一人で勝手の分からない家に過ごすというのは中々に心細く、物音ひとつしただけでも怖いと思います。
ただこの話は、3Fにいる老人の生死が不明なのでより不気味に感じてしまいました。
「集まった四人」はバイト先で知り合った男性とハイキングに行くことになったが、当日にキャンセルされてしまい、面識のない人たちとハイキングに行くという話。
この話の恐ろしいところは、一人しか怪異を認識していないということ。
そして、捨てたはずのあるものがまた自分のところに戻ってきていたということ。
怪異を一人しか認識していないということは、恐怖心を他の参加者たちと共有できないということで、これは心細いです。
下手したら「気でも狂ったんじゃないの?」と思われそうですよね。
捨てたはずのあるものが戻ってくるというのは、まるで『リング』の呪いのビデオテープみたいですよね。
(ちなみに映画『リング』を僕は観たことがありません。)
この話の主人公はもう一度捨てますが、他の参加者たちは捨てませんでした。
この違いが後々、大変なことになるのですが伏せておきます。
「屍と寝るな」は三津田の友人の母親の入院先に、奇妙な話をする老人が入院し、その老人の話をまとめたものになっています。
その話の内容というのが、ある老人と出会い、その人から奇妙な話をいくつも聞いて寝落ちすると、ある場面に毎回戻っているというものです。
「どこに怖い要素があるの?」ってなると思いますが、この話の真相が不気味です。
実はこの老人は宿主を変えているのではないかということ。
だから老人が10歳ぐらいの話を延々と続けているのは、この老人の肉体に10歳の子どもの魂が入れ替わっているからなのだろうと推理しています。
つまり老人本人の魂は若い肉体を手に入れて悠々と生活しているということになります。
そして肉体にまた老いが来たら、誰かの肉体と入れ替わるのだろうと思うと地味に恐ろしいです。
三津田の友人の母親はこの現象に巻き込まれていないのか、注目して読んでみると面白いかもしれないです。
「黄雨女」は実話であってもおかしくないような内容でした。
男子大学生が通学途中の路上で天候に関係なく黄色いレインコートや長靴を着装した女性に出会うという話。
不気味でとは感じているものの、その女性が大学生に対して何か危害を加えるわけではありませんでした。
しかし、事態は急変します。
なんと、この男子大学生の行く先にこの女性が佇んでいたのです。
さらにこの男子大学生の自宅にまで接近し、遂には自宅まで来たのです。
ゆっくりと恐怖に陥れるのは、さすがにキツいです。
黄色いレインコートの女性が何者であるのかが一切謎というのも恐ろしいです。
「すれちがうもの」に関しても実話であってもおかしくないような内容でした。
この話の主人公は通勤途中に黒い影とすれ違いますが、この黒い影がやはり主人公の自宅にどんどんと近付いてくるというのはやっぱり恐ろしいし、自宅のドアを延々とノックしてくるのは精神的にしんどいです。
主人公は友人によってこの状況を打開していますが、今度はその友人の行動がおかしくなり、なんとその黒い影と同じ行動をしていました。
きっと黒い影が友人に悪影響を与えたのだろうと思います。
もしかしたら取り込まれたのかもしれません。
怪異が生じ始めたら悪化する前に対処しなければならないということを認識させられました。
主人公が仕事から帰って来て「ただいま~」と言うと、聞き覚えの無い声が「お帰り」と返してきたそうです。
主人公は一人暮らしなので、声が返ってくるということはまずありません。
では、「お帰り」と返答してきたものの正体とは一体何なのか……。
考えただけでも背筋が凍ります。
一人暮らしをしている際は、無暗に「ただいま」なんて言わない方が良いのかもしれません。
最後に
今回は三津田信三さんの『怪談のテープ起こし』の感想を書いていきましたが、いかがだったでしょうか。
本作では謎の言葉の意味を決して解かないように、と著者が忠告しています。
その言葉というのがこちらです。
もあぢろびうぢなまばぢま、づめねぢぬんねがう
この言葉の意味を解いてしまうと、本作品がフィクションなのか、それともノンフィクションなのか分からなくなってしまいます。
個人的にはフィクション(作り話)であって欲しいですが、もしノンフィクションなのだとすれば「黄雨女」や「すれちがうもの」のような怪異には遭遇したくないと思いました。
この謎の言葉の意味を自分で解き明かすことはできませんでしたが、ある方がブログで謎の言葉の意味を解明していました。
謎の言葉の意味を知りたい方はネット検索をしてみてください。
この言葉の意味について信じるか、信じないかはあなた次第です。
以上、三津田信三さんの『怪談のテープ起こし』の感想記事でした。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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