にかどくです。
今回は『余命3000文字』を読了したので、こちらの感想を書いていきます。
著者紹介
本作の著者は村崎羯諦(むらさき ぎゃてい)さんです。
一九九四年・熊本県生まれ。
小説投稿サイト「小説家になろう」にて短編小説の投稿を中心に活動を行う。
引用元:村崎羯諦著『余命3000文字』(2020年/小学館/カバー袖)
あらすじ
「大変申し上げにくいのですが、あなたの余命はあと3000文字きっかりです」
ある日、医者から文字数で余命を宣告された男に待ち受ける数奇な運命とは――?(「余命3000文字」)。
「妊娠六年目にもなると色々と生活が大変でしょう」
母のお腹の中で引きこもり、ちっとも産まれてこようとしない胎児が選んだまさかの選択とは――?
(「出産拒否」)。
「小説家になろう」発、年間純文学【文芸】ランキング第一位獲得作品が、待望の書籍化。朝読、通勤、就寝前、すき間読書を彩る作品集。
泣き、笑い、そしてやってくるどんでん返し。
書き下ろしを含む二十六編を収録!
引用元:村崎羯諦著『余命3000文字』(2020年/小学館/裏表紙)
感想(ネタバレ含みます)
本作は26編ものショートショート作品で構成されています。
僕がこの中で好きな作品は「心の洗濯屋さん」と「世界がそれを望んでいる」「食べログ1.8のラーメン屋」です。
「心の洗濯屋さん」という作品は、心の洗濯を仕事にしている両親の手伝いをしている子どもの視点から描かれたものです。
この作品では国の役人が汚れていない心を異臭のする石鹸で洗うように心の洗濯屋に依頼してから、洗濯屋を営む両親の考え方が変わっていきます。
その子の父親は最初こそは役人から依頼された仕事を疑問に思いながら引き受けていましたが、時間が経つにつれて異臭のする石鹸で心を洗濯することに一切の躊躇いがありませんでした。
そして、その子どもも自分の心を異臭のする石鹸で洗った途端、その石鹸で人の心を洗濯することに積極的になりました。
役人が持ってきた石鹸は、思想を国の都合の良いように変えてしまうものだったのです。
国に盾突くような思想を持つ人間は修正対象であり、国と同じような考え方をしないのは認めないということなのでしょう。
だから作中に出てくる、子どもの先生の思想の変わりようが怖かったです。
多様な意見があっても良いと普段から言っていたのに、役人の依頼によって心を洗われてしまったあとは「国王万歳!」と何かと国を褒めたたえていましたから。
もし多種多様な思想を認めなかったら、恐ろしいことが起きるのではないかなと思います。
なぜなら誰も誤りを誤りだと声を上げて止めることができなくなるからです。
そして人類はその苦い経験をしています。
作中のような出来事が今後起きないことを祈るばかりです。
というよりかは、思想は一つでなければならないという狭い考え方を僕たちがしなければ良いだけの話なのかもしれません。
僕たち一人ひとりが気を付けなければならないことだと思います。
「世界がそれを望んでいる」という作品では、主人公が近い未来に自殺をするという想定で世界が動いているというような話です。
まだ生きているのに主人公の住んでいる物件が事故物件として売り出されていたり、警察が現場検証に来たりと、あり得ない世界観が広がっていました。
ここで悲しいのは主人公の自殺を誰も止めようとしないことです。
最初こそ主人公は生きてやると決意していましたが、誰にも自殺を止められていないという事実に直面し、罪悪感を覚えるようになってしまい、遂には……。
やっぱり人間は一人では生きていけないということを痛感させられる作品でした。
僕は誰かから必要とされているのだろうか。
僕が亡くなったときに泣いてくれる人はいるのだろうか。
不意にそんなことを考えてしまいました。
「食べログ1.8のラーメン屋」では、お客さんに思う存分SNSで叩いてもらえるように不味いラーメンを提供するという話です。
もちろん接客態度も最低です。
しかし、SNSで何かを叩いてストレスを発散したいという人にはうってつけの店です。
そして、このラーメン屋にしてみれば、ストレスを発散したいと思う人が増えれば増えるほど利益は上がるので、そういう人たちが増えるのは願ったり叶ったりのことです。
このラーメン屋がどうなるかは小説を読んでいただきたいので省きますが、僕はコントのようなオチで面白かったなと思いました。
そしてそれほどまでにストレスを発散したいのか!っとツッコミも入れたくなりました。
最後に
今回は村崎羯諦さんの『余命3000文字』の感想を書いていきましたが、いかがだったでしょうか。
本作はショートショート作品が26作収録されているので、誰でも必ずお気に入りの作品が見つかるのではないかと思います。
また5分~10分ぐらいで1作品を読み終えることができるので、読書が苦手な方でも楽しみやすいと思います。
(そもそもこのブログを読んでいただいている方に、読書が苦手という方はいらっしゃるのでしょうか……?)
これから読書を習慣づけたいという方にお薦めできるので、気になった方は近くの書店でチェックしてください!
以上、村崎羯諦さんの『余命3000文字』の感想でした。
最後までご覧いただき、ありがとうございました!
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