にかどくログ

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事実を疑わなければ真実は見えない。 ~長江俊和著『出版禁止 死刑囚の歌』読了~

にかどくです。

2日連続の投稿です。 

 

今回は『出版禁止 死刑囚の歌』を読了したので、こちらの感想を書いていきます。

 

出版禁止 死刑囚の歌(新潮文庫)

 

 

著者紹介

本作の著者は長江俊和さんです。

このブログで過去に『出版禁止』『掲載禁止』の感想を書きましたが、その2作の著者でもあります。

1966(昭和41)年、大阪生れ。

映像作家、小説家。

深夜番組「放送禁止」シリーズは多くの熱狂的なファンを生み出した。

自身の監督により映画化もされ、これまで3作が公開されている。

2014(平成26)年には『出版禁止』を刊行、話題となる。

他の著書に、『ゴーストシステム』『放送禁止』『掲載禁止』『検索禁止』『東京二十三区女』がある。

 

長江俊和著『出版禁止 死刑囚の歌』

(2021年/新潮社/カバー袖より)

 

概要

千葉県柏市で6歳と4歳の姉弟が誘拐され、無惨な姿で発見された。

犯人は死刑判決を受け、やがて刑は執行されたが、最後まで動機は不明だった。

事件から22年後。

東京都向島で凄惨な一家三人殺傷事件が発生する。

殺害されたのはなんと柏の事件の……。

共通する手口、戦慄の短歌、消えたM子。

本当の鬼畜は誰なのか。

虚実が複雑に絡みあい、逆転また逆転そして絶句。

あなたは今度も騙される!

 

長江俊和著『出版禁止 死刑囚の歌』

(2021年/新潮社/裏表紙より)

 

登場人物

主な登場人物についてまとめてみました。

 

・橋本勲(はしもと いさお)

1993年に起きた柏市姉弟誘拐殺人事件の真相に迫るルポライター

 

・望月辰郎(もちづき たつろう)

1993年に起きた柏市姉弟誘拐殺人事件の犯人で、元死刑囚。

事件当時ホームレスであったが、1991年に娘の今日香が死亡するまで国語の教師をしていた。

2011年に死刑が執行された。

 

・望月今日香(もちづき きょうか)

望月辰郎の娘。父親の影響で和歌に精通している。正義感が強い。

1991年に高校の屋上から飛び降り自殺し、死亡した。

 

・小椋須美奈(おぐら すみな)

小椋鞠子と克司の長女。

1993年に起きた柏市姉弟誘拐殺人事件で望月辰郎に扼殺され死亡。

享年6歳。

 

・小椋亘(おぐら わたる)

小椋鞠子と克司の長男。

1993年に起きた柏市姉弟誘拐殺人事件で望月辰郎に撲殺され死亡。

享年4歳。

 

・小椋鞠子(おぐら まりこ)

小椋須美奈と亘の母親。柏市姉弟誘拐殺人事件の遺族。

22年後の2015年に東京都向島一家三人殺傷事件に巻き込まれ、撲殺され死亡。

 

・小椋克司(おぐら かつじ)

小椋須美奈と亘の母親。柏市姉弟誘拐殺人事件の遺族。

22年後の2015年に東京都向島一家三人殺傷事件に巻き込まれ、刺殺され死亡。

 

・小椋A子(仮名)

小椋鞠子と克司の次女。中学3年生。

1993年に起きた柏市姉弟誘拐殺人事件のことは「ある人」から知らされて初めて知った。

2015年に東京都向島一家三人殺傷事件に巻き込まれ、扼殺されそうになった。

 

・田所亮平(たどころ りょうへい)(仮名)

望月今日香の高校の時のクラスメイト。

橋本勲に対して、今日香がいじめのリーダーであったことを証言した。

親族代々が経営している企業で働いている。

 

・加藤江美(かとう えみ)(仮名)

望月今日香の高校の時のクラスメイト。

橋本勲に対して、今日香のことについて事実誤認していることを知らせ、今日香がいじめのリーダーではなかったことを証言した。

 

・伊尾木誉(いおぎ ほまれ)

某国立大学の准教授で、臨床心理学を研究している。

警察の要請により、東京都向島一家三人殺傷事件に巻き込まれた小椋A子のカウンセリングを行っている。

本書『出版禁止 死刑囚の歌』の編纂者として2つの事件の真相に迫っている。

 

感想(※ネタバレ含む)

「事実を積み重ねることが必ずしも真実に結びつくとは限らない」

これは長江俊和さんの作品であるフェイクドキュメンタリー『放送禁止』のキャッチコピーですが、本作もこのキャッチコピーがよくマッチします。

(そもそも本作は「禁止」シリーズのいち作品なのでマッチして当然かもしれません。)

 

序盤は望月辰郎がいかに凶悪犯であるのか、また望月家が代々恐ろしい血を引いていたのかをかなり印象付けれらます。

柏市姉弟誘拐殺人事件の犯人である望月辰郎は、公判の際に悪魔に指示されて姉弟を殺したことを告げました。

こんなことを言われると、辰郎がいかに狂気の人間であるのかを嫌でも認識させられます。それにその父親が殺人犯であったという事実を出されると、辰郎が殺人を行ってしまうのも当たり前だよな、と妙に納得させられてしまうのです。

彼の娘である今日香がいじめをしていても、「血は争えない」という一言で片づけられます。

 

しかし、2本目のルポ「隣室の殺戮者——向島・一家三人殺傷事件——」では、柏市姉弟誘拐殺人事件の捜査本部が設置された所轄署の元警察官がある証言をしたのです。

それは小椋克司が霊安室で立ち合いの警察官に対して、「見つかった遺体は2人だけなのか」「どうして遺体が裸になっているのか」「捜索は続けられるのか」を質問しているのです。

どれも遺族の言葉として受け取ることもできますが、個人的には「見つかった遺体は2人だけなのか」が引っかかりました。

我が子が遺体として発見された中、果たして他人の心配なんてするでしょうか。

そもそも犯人である望月辰郎は自首しており、彼の証言を頼りに遺体の捜索が行われていました。

そして彼は子供を2人殺したことを正直に派出所の警察官に話しているのです。

にも関わらず、小椋克司の「見つかった遺体は2人だけなのか」と警察官に質問するのは違和感しかありません。

となると、小椋克司がそんなことを聞いた理由は一つです。

2人が死亡した真実を知っていたからです。

遺族の言葉としてではなく、犯人の言葉としてこれらの言葉は十分受け取ることができてしまうのです。

 

さて、そうなるとなぜ望月辰郎がやってもいない犯罪をさも自分がやったかのように証言し、死刑判決を言い渡されて亡くなったのかという疑問が浮上します。

これについてはいじめの主犯格とされた今日香の自殺と関係しています。

あまり内容を書いてしまうと、本作を楽しめないと思うのでこれ以上は書きませんが、一連の事件はすべて人の悪意によって引き起こされてしまっています。

この悪意を誰かが止めることができたのなら、辰郎が無実の罪で死ぬことはなかったし、今日香も自殺しなくて済みました。須美奈や亘も死なずに済みました。

読了後、やるせなくなりました。

 

作中に辰郎の和歌が何回も出ていますが、ここにはあるメッセージが隠されていました。

いろいろな方が解説をしているので、ここでは敢えて書きません。

表向きは恐ろしい和歌ですが、あるものをキーにして読み解くと望月辰郎がある人物に宛てたメッセージであることが分かります。

「ある人物」の正体を解き明かすためには、様々な人の証言や年表を鵜呑みにしないことが重要です。

 

みなさんにも真実を探って欲しいと思える最高の一冊でした!

 

最後に

今回は長江俊和さんの『出版禁止 死刑囚の歌』の感想を書いていきましたが、いかがだったでしょうか。

読了後、表紙を改めてみると、「死刑囚」の「囚」が鏡文字になっているような気がしました。

気のせいでしょうか?

もしかしたら、これもヒントになっていたのかもしれません。

ちなみに望月辰郎が読んだ和歌10首に隠されたメッセージを自力で見つけられた方は、相当注意力があると思います。

僕はネタバレサイトに飛ばなければ、メッセージに気付けませんでした。

 

まだまだ謎が解明されたわけではないので、忘れたころにもう一度本作を読んでみたいと思います。

それぐらい、本作は面白いです。

そしてきっと、読了後にこのメッセージが突き付けられるのでしょう。

 

「あなたには、真実が見えましたか?」

 

この記事を読んで少しでも気になった方は、是非本作を読んでみてください!

真実に辿り着くためには、紙とペンが必須です。

 

以上、長江俊和さんの『出版禁止 死刑囚の歌』の感想記事でした。

最後までご覧いただき、ありがとうございました!

 

☆宜しければ、記事に対する感想をコメントしていただけると嬉しいです☆

 

出版禁止 死刑囚の歌(新潮文庫)

出版禁止 死刑囚の歌(新潮文庫)

 

 

『出版禁止』の感想記事はコチラ☟

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『掲載禁止』の感想記事はコチラ☟

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