にかどくログ

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余命を分け合う中で見つけた「幸せ」とは? ~宇山佳佑著『この恋は世界でいちばん美しい雨』読了~

にかどくです。

 

今回は『この恋は世界でいちばん美しい雨』を読了したので、こちらの感想を書いていきます。

この恋は世界でいちばん美しい雨 (集英社文庫)

 

 

著者紹介

本作の著者は宇山佳佑さんです。

1983年生まれ。神奈川県出身。脚本家。

ドラマ『スイッチガール!!』『主に泣いてます』『信長協奏曲』などの脚本を執筆する。

著書に『ガールズ・ステップ』『桜のような僕の恋人』『今夜、ロマンス劇場で』『君にささやかな奇蹟を』『恋に焦がれたブルー』がある。

引用元:宇山佳佑『この恋は世界でいちばん美しい雨』(2021年/集英社/カバー袖)

 

あらすじ

駆け出しの建築家・誠と、カフェで働く日菜。

雨がきっかけで恋に落ちた二人は、鎌倉の海辺の街で同棲中。

いつか日菜に「夢の家」を建ててあげたいと願う誠だが、ある雨の日、二人は事故で瀕死の重傷を負う。

”案内人”と名乗る男女の提案によって誠と日菜は二人で二十年の余命を授かり、生き返ることに。

しかしそれは、愛し合う二人が互いの命を奪い合う苛酷で切ない日々の始まりだった――。

引用元:宇山佳佑『この恋は世界でいちばん美しい雨』(2021年/集英社/裏表紙)

 

主な登場人物

登場人物を自分なりにざっくりとまとめてみました。

 

・雨宮誠(あまみや まこと)

本作の主人公。

駆け出しの建築家で、「夢の家」を建てて日菜と家族になって過ごすことを夢見ていたが、バイク事故で日菜と共に瀕死の重傷を負ってしまう。

「ライフシェアリング」という奇跡を明智能登から受け取るが、幸せを感じやすい体質である日菜に強く当たってしまう。

しかし、自分がすべきことを見つけ出し、ライフシェアリングに囚われずに生きていくようになった。

日菜からは「キョロちゃん」と呼ばれている。

 

・相澤日菜(あいざわ ひな)

本作のヒロイン。

七里ヶ浜にあるカフェ「レインドロップス」の店員。

「夢の家」を建てるという夢を持っている誠を応援しているが、バイク事故で誠と共に瀕死の重傷を負ってしまう。

「ライフシェアリング」という奇跡を明智能登から受け取るが、幸せを感じて誠の命を奪ってしまうことに引け目を感じており、苦手なホラー映画を観て命の調整をしていた。

 

明智(あけち)

霊魂管理センターの喪服姿の案内人。

ある理由で「ライフシェアリング」という奇跡に嫌悪感を持っているが、誠と日菜の奇跡をサポートする。

「ライフシェアリング」に囚われている誠に対してアドバイスを度々していた。

 

能登(のと)

霊魂管理センターの喪服姿の案内人。

余命を奪われることで日菜に強く当たってしまう誠に対して嫌悪感を抱く一方で、日菜には次第に感情移入していった。

 

・大石縁(おおいし ゆかり)

カフェ「レインドロップス」の店長。

仕事はほぼ全て日菜に任せている。

結婚していないにも関わらず、ウエディングドレスがあることに気色悪さを感じながらも捨てられずにいる。

 

・畑中研(はたなか けん)

日菜の幼馴染で、未だに日菜に好意を持っている。

日菜を傷付ける誠に対して、彼女を奪うことを宣言した。

 

・真壁鉄平(まかべ てっぺい)

誠が尊敬している建築家。

誠に一度はダメ出ししたが、建築家として生きる覚悟を感じた誠を自身の事務所に入れる。

インドロップスの建築を昔に担当していた。

 

・磐田(いわた)

誠と日菜が住んでいる古民家のオーナー。

誠と日菜の関係が冷えていた頃、好きな人と一緒に生きていくために大切なことを誠に教えた。

 

感想(※ネタバレ含みます)

まずこの「ライフシェアリング」という奇跡ですが、これはとても残酷な奇跡です。

というのも、この奇跡は20年という余命を二人で共有して過ごすというものです。

幸せを感じると相手の余命を1年奪い、不幸を感じると相手に余命を1年奪われるというシステムになっています。

本作のヒロインである日菜は幸せを感じやすい体質であるため、ちょっとしたことでも幸せを感じてしまい、誠はどんどんと余命を奪われてしまいます。

余命を奪われた誠は死の恐怖から、幸せを感じる日菜に強く当たってしまいます。

ライフシェアリング前は日菜に幸せになって欲しいと願っていたはずなのに、余命を分け合って過ごしていくことになった途端、他人の幸せを願えなくなるという主人公に苛立ちを覚えました。

でも、こう思うのは他人事だからかもしれません。

もしも自分がこのライフシェアリングという奇跡を受けてしまったら、やっぱり死ぬのが怖いから誠のようになってしまうなと思いました。

誠がライフシェアリングという不条理な奇跡に負けそうになったとき、案内人の明智の言葉が僕の中では胸に刺さりました。

 

「命とは、人が持つなにものにも代えがたい唯一無二のものだ。だけどそれは人を動かすエネルギーに過ぎない。その命をどう使うかが人間の本当の価値だ。人生の意味だと僕は思うよ。君には後悔しない人生を送ってほしい。たとえそれがたった十年の命だとしても、ライフシェアリングという不条理な奇跡に負けないでほしいんだ」

引用元:宇山佳佑『この恋は世界でいちばん美しい雨』(2021年/集英社/P.154L.3~L.6)

 

余命を奪われることを気にする人生に価値はあるのか、と誠に対して明智が問うているような気が僕にはしました。

もちろん、そんな人生に価値なんてないと僕は思います。

せっかく余命を与えられたのだから、自分のしたいことをとことん突き詰めてやる方が価値があると思います。

誠がすべきことはたった1つで、「日菜を幸せにする」ということが誠の生きる意味だったのだと思います。

 

そもそも人はいつ死ぬか分かりません。

もしかしたらいまこの瞬間に死んでしまうことだってあるわけです。

死んでしまうとき、後悔のない人生だったと胸を張れる人はどれだけいるのでしょうか。

僕はおそらく後悔のない人生だったと胸を張って死ねないと思います。

まだまだやってみたいことがあるからです。

「やってみたいことがあるのにそれをやらないことに人生の意味はあるの?」と間接的に明智から問われているような気さえしました。

 

ただ、それでも誠はこのライフシェアリングという奇跡に負けそうになっていました。

しかし、最愛の妻を亡くした磐田の言葉で誠の心境に変化が訪れます。

日菜が命を奪うたびに謝ってくれていたのは、誠と一緒に生きていたいからだということに気付きました。

そして日菜が命を奪ってしまうという苦しみを味わっていることにも気付きました。

ここから再び誠と日菜の距離が近付くわけですが、磐田の言葉がとても良いのです。

好きな人と一緒に生きていくために必要な言葉とは「ありがとう」と「ごめんなさい」です。

当たり前の言葉のように聞こえると思いますが、案外これを口に出せている人は少ないように思いました。

 

何かをしてもらったら、それを当たり前だと片づけるのではなく「ありがとう」と口に出して言ってみる。

悪いことをしたら「ごめんなさい」と素直に謝る。

 

歳を重ねてしまうと変なプライドを持ってしまって、なかなか口に出しづらい言葉ではあると思います。

だからこそ、これらの言葉が素直に出せる人はとても人間としてできている人なんだなと思います。

僕はというと「ありがとう」を連発する人間なので、割と人間関係は上手くいっていると思います。

ただ職場の後輩にだけは「ありがとう」をなかなか言えていないので、変なプライドを無意識に持ってしまっているのだなと気づかされました。

僕はまだまだ人間としてできていないようです。

 

さて、余命を日菜と分け合う中で自分にとっての幸せを誠は見つけました。

それは「自分がいなくても日菜がたくさんの人に囲まれて幸せに生きること」でした。

この誠の答えはとても格好良いものだと思いましたし、人間としてとても立派だなと思いました。

おそらくこの答えは究極の答えだと思います。

好きな人が自分以外の人と幸せに生きることを自分にとっての幸せと位置付けられる人はこの世にはなかなかいないと思います。

なぜならこの答えは、好きな人の視点に立っていて自分の視点を完全に排除しているからです。

それだけに誠は本当に人間としてとても立派だと思うのです。

あんなに弱かった誠がここまで強くなるとは、脱帽です。

 

本作は読む人によってはハッピーエンドと捉える人もいれば、バッドエンドと捉える人もいるかもしれません。

日菜のことを心の底から気遣える人間に誠が成長しており、且つ、日菜も幸せに暮らすことができていたから、僕は本作をハッピーエンドと捉えています。

 

最後は涙せずには読めないと思うので、ハンカチを準備しておくことをお薦めします。

 

最後に

今回は宇山佳佑さんの『この恋は世界でいちばん美しい雨』の感想を書いていきましたが、いかがだったでしょうか。

宇山佳佑さんの作品を読むのは本作で3つ目となりますが、どれも感動的でハズレがないように思いました。

『桜のような僕の恋人』『君にささやかな奇蹟を』、そして本作。

どれも映像化したらもっと面白そうで感動的な作品になりそうだなと思いました。

映像化したらどれも見てみたいです。

どなたか映像化をお願いします!

 

以上、宇山佳佑さんの『この恋は世界でいちばん美しい雨』の感想でした。

最後までご覧いただき、ありがとうございました!

 

☆宜しければ、記事に対する感想をコメントしていただけると嬉しいです☆

 

 

『君にささやかな奇蹟を』の感想記事はコチラ☟

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