みなさん、こんにちは。
にかどくです。
今回は『僕はロボットごしの君に恋をする』を読了したので、こちらの感想を書いていきたいと思います!
著者紹介
本作の著者は、山田悠介さんです。
『リアル鬼ごっこ』や『×ゲーム』を書いた方です。
ちなみに『リアル鬼ごっこ』は高校卒業後に自費出版した作品だそうです。
自費出版した作品が大ヒットした上に、映画化までされるとは本当に凄いです!
著者の詳細は以下の通りです。
1981年生まれ。2001年デビュー作『リアル鬼ごっこ』がミリオンセラーに。
その後『親指さがし』『パズル』などのヒット作を立て続けに発表し、10代を中心に圧倒的な支持を得る。映像化作品も多数。
著書に『スイッチを押すとき』『その時までサヨナラ』などがある。
『僕はロボットごしの君に恋をする』(山田悠介)
(河出書房新社/2020年/著者紹介より)
本作の概要
ロボットが普及した近未来東京。
AIロボット技術研究所運用部警備課に属するロボット操作官・大沢健は、最新鋭のロボットを使い、研究所と警察庁が合同で発足した極秘の治安維持プロジェクトに参画する。
同僚で幼馴染のエリート研究員の天野陽一郎の妹である咲が勤務するスポーツメーカーがある地区を警備することになった健は、片想い相手である咲が陽一郎と休日に買い物に行くことを知る。健は勤務時間中に関係のない地域にロボットを向かわせ、2人を尾行していた。
咲と健の操作するロボットは一度顔を合わせており、咲と出会う可能性が増えることを悟った健は、勤務時間終了間際にロボットを咲の勤めるスポーツメーカーのショップに向かわせる。そこで男性とぶつかるが、次の瞬間ロボットは爆発事故に巻き込まれてしまう。
後日、研究所長からある企業にテロ予告があり、健のロボットが損壊してしまった爆発事故がテロと関係している可能性があることを告げられる。その企業とは、咲が勤めるスポーツメーカーのアテナ社だった。
ロボットのメモリーが壊れてしまっている中、容疑者の姿を見たのは健だけ。犯人の解明をしたい所長は、健をテロ対策担当に任命した。健は咲を守るためにテロ容疑者探索機能を搭載した最新鋭ロボットの四号(別名:佐藤翼)を操作し、アテナ社の警備に当たることに。そこで、咲との距離を縮めていくが、3度目の東京オリンピック開催中に事件が起きる。
予想外の出来事が健を襲うが、その中でテロの真実が次第に明かされていく……。
登場人物
・大沢健
本作の主人公で、AIロボット研究所運用部警備課に所属するロボット操作官。28歳。
小学生の頃、いじめられていたときに咲が兄の陽一郎とともに助けてくれたことをきっかけに咲のことが好きになる。健が高校3年生のときに、AIロボットが故障したことが原因で飛行機事故に巻き込まれた陽一郎と咲の両親の葬儀に出席する。そのとき、健の前で泣き出した咲を一生守ると決意する。ネガティブで仕事でミスをしてしまうことが多いが、心優しい青年。
・天野咲
AIロボット研究所のエリート研究員である天野陽一郎の妹。23歳。
オリンピックのテロ予告をされているスポーツメーカーのアテナ社に営業職として勤務している。大学では陸上部に所属していた。ストーカーから助けてくれた佐藤翼(健の操作するロボット)に好意を寄せるようになる。女子マラソンの金メダリスト候補である武見結花とは陸上部のときのチームメイト。
・天野陽一郎
AIロボット研究所のエリート研究員で、大沢健とは幼馴染。
スポーツ万能で背も高くルックスも良い。国立の名門大学理工学部に現役で合格している。物事に集中すると周りが一切見えなくなる性格。健をテロ対策担当に推薦した張本人。
・三号
健の操作するAIロボット。正式名称は「T-003人型ロボット」。
陽一郎と咲を尾行し終わった際に、爆発に巻き込まれ損壊する。
・四号
健の操作する「テロ容疑者探索機能」を搭載した最新鋭のロボットで、外見は三号とは変わらない。
・辻秋成
AIロボット研究所運用部警備課長。部下の手柄を自分の手柄に、自分の失敗を部下に押し付けるような、出世にしか興味のない人間。
・里見高徳
AIロボット研究所長。50歳を超えている天才科学者。遠隔操作型ロボット開発の功績が認められ、研究所を設立したノーベル賞受賞者である初代所長の研究を引き継いでいる。次期ノーベル賞候補の筆頭と目されている。
・武見結花
金メダル候補の陸上選手でアテナ社に所属している。
咲とは大学時代の陸上部のチームメイト。
元々はソフトボール部に所属していたが芽が出なかったため、大学2年生の時に陸上にコンバートした過去を持つ。
感想
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本作を読んで、儚いラブストーリーだと思いました。
健はロボットである佐藤翼を通して、咲と会話したり一緒の時間を過ごしているわけですが、これがなかなか切ないです。
なぜなら咲には健の姿が一切見えていないからです。何をするにしても咲は佐藤翼の言動にしか見えません。だから健が好意を伝えていても、咲にしてみれば佐藤翼という人物から好意を伝えられているとしか思えないんです。ここが何とももどかしいです。
そして、健は人間ではありませんでした。健の正体は、陽一郎の父である天野理や陽一郎、里見所長によって作られたロボットでした。
幼い記憶があるのは、天野理が作り出した数々のロボットから抜き出した記憶をインプットされているからでした。そして、咲に対する愛情も大沢健という人間から湧き出たものではなく、陽一郎の手によって書かれたプログラムによって人工的に作られたものでした。咲に対する愛情は自発的に生まれたものではなかった。これは相当ショッキングな事実です。
でも、僕は健は人間以上に人間だったと思っています。
咲への愛情は陽一郎によってプログラミングされたものでしたが、咲を守るためにインプットされている職務規定を破りました。陽一郎はこれを暴走だと説いていますが、果たしてそうでしょうか。
人間にだってこういう場面はあるはずです。
これをロボットによる暴走として簡単に片づけてしまうのは何か違うような気がしました。むしろ、ルールに縛られて雁字搦めになって行動できない人間の方がロボットなのではないかと思いました。
(ただし、ルールを安易に破って良いと言っているわけではありません。)
もしロボットが人間と同じように物事を独自に判断し行動できるようになったら、世界はどのように変わってしまうのだろうかと考えずにはいられません。労働をAIロボットにさせて人間が怠惰になったとしたら、ウルトラセブンの「第四惑星の悪夢」やウルトラマン80の「裏切ったアンドロイドの星」のような運命が人間には待っているのだろうかと……。
いずれにせよ全てをロボットに任せきりにすると自らを破滅に導きそうで怖いと思いました。
話が若干脱線してしまいましたが、この作品はハッピーエンドなのかバッドエンドなのかよくわかりません。
咲にしてみれば、同じ人物にずっと想われ続けていたということになるのでハッピーエンドのような気がします。しかし、他方では咲への想いは全てプログラムによるものだったと思うとバッドエンドのような気もしてしまいます。
この作品をどうとらえるかは読者によって、分かれそうな気がします。
最後に
今回は山田悠介さんの『僕はロボットごしの君に恋をする』の感想を書いていきましたが、いかがだったでしょうか。
中高生に人気の作家さんとだけあって、とても読みやすい作品でした。
SF好きの方にもおすすめできる作品なので、気になった方は読んでみてください。
なお、この作品は劇場版アニメ化が決定されています!
個人的には映像作品としても観てみたいです。
いつ公開されるのかはわかっていませんが、気長に待とうと思います。
本作はPVも作られています。PVはYouTubeで公開されています!
僕は文庫本で本作を読みましたが、単行本にはない「それから」というアフターストーリーが追加されていますので、単行本しか読んでいない方はアフターストーリーを読むために文庫版を手に取ってみてはいかがでしょうか。
最後までご覧いただき、ありがとうございました!