にかどくです。
今回は『本日は、お日柄もよく』という小説を読了したので、こちらの感想を書いていきます。
著者紹介
本作の著者は原田マハさんです。
1962年、東京生まれ。
伊藤忠商事、森ビル森美術館設立準備室、ニューヨーク近代美術館勤務を経て、2002年独立後フリーランスのキュレーターとして活躍。
05年「カフーを待ちわびて」で第1回日本ラブストーリー大賞を受賞。
12年『楽園のカンヴァス』で第25回山本周五郎賞受賞。
17年『リーチ先生』で第36回新田次郎文学賞を受賞。
著書に『生きるぼくら』『ジヴェルニーの食卓』『あなたは、誰かの大切な人』『異邦人』『たゆたえども沈まず』『美しき愚かものたちのタブロー』『風神雷神 Juppiter, Aeolus』などがある。
原田マハ著『本日は、お日柄もよく』
(2013年/徳間書店/カバー袖より)
概要
OL二ノ宮こと葉は、想いをよせていた幼なじみ厚志の結婚式に最悪の気分で出席していた。
ところがその結婚式で涙が溢れるほど感動する衝撃的なスピーチに出会う。
それは伝説のスピーチライター久遠久美の祝辞だった。
空気を一変させる言葉に魅せられてしまったこと葉はすぐに弟子入り。
久美の教えを受け、「政権交代」を叫ぶ野党のスピーチライターに抜擢された!
目頭が熱くなるお仕事小説。
原田マハ著『本日は、お日柄もよく』
(2013年/徳間書店/裏表紙より)
登場人物
本作の登場人物を自分なりにまとめてみました。
・二ノ宮こと葉(にのみや ことは)
菓子メーカーのトウタカ製菓のOL。
想いを寄せていた幼なじみの今川厚志の結婚披露宴で、彼の顧客である吉原家の鈴木社長のスピーチ中にスープ皿に顔を突っ込んだことで、スピーチライターの久遠久美と出会う。彼女のスピーチを聞いて感動し、彼女に弟子入りをする。
仕事ではトウタカ製菓の社長のご指名により広報戦略室に異動するが、今川厚志の出馬を受けて会社を退職して、本格的にスピーチライターとして活動し始める。
・久遠久美(くおん くみ)
伝説のスピーチライター。中学生のときにスピーチコンクールで優勝し、そこで父親の友人である民衆党の今川篤郎幹事長とスピーチライターになることを約束する。
両親が交通事故によって亡くなった際に今川幹事長に励まされたことで、野党・民衆党のスピーチライターとなる。
・和田日間足(わだ かまたり)
超大手広告代理店・番通のコピーライター。
こと葉の同僚で友人である千華の結婚披露宴で、こと葉と出会う。
トウタカ製菓のブランディングプロジェクトのチーフコンサルタントに就任し、こと葉と一時期仕事を一緒にするが、総選挙の際には与党・進展党のスピーチライターとなりこと葉と久美と対立する。
ただし、進展党の卑劣な手をこと葉に伝えるなど陰でこと葉を支えている。
・今川厚志(いまがわ あつし)
超大手広告代理店・白凰堂のコピーライター。
野党・民衆党の小山田党首に出馬を要請されるも、一度は断る。
しかし党首討論を目の当たりにしたことで、自分の家族を守るために、世の中を良くするために出馬の意思を固める。
・小山田次郎(おやまだ じろう)
野党・民衆党の党首。今川篤郎亡き後に進展党の黒川常治に議席を奪われたことで、次の選挙こそは今川の名前を復活させたいと思っている。
今川篤郎には次期党首になることを期待していた。
・今川篤郎(いまがわ あつろう)
野党・民衆党の前幹事長。いつも社会的弱者の存在を気にかけていほどの人情深さを持つ。癌になった際には世間に公表し、闘病で苦しんでいる人たちを激励したいと一生懸命に自身の仕事をこなしていた。
・小早川順造(こばやかわ じゅんぞう)
与党・進展党の党首で内閣総理大臣。
政治手腕はないが、血筋の良さや女優の妻がいること、ルックスの良さといった政治家としての能力以外のものに支えられて一般的なウケは良い。
・黒川常治(くろかわ つねはる)
今川篤郎亡き後に議席を奪った与党・進展党の国会議員。
小早川首相の朋友であり神奈川県下の医師会にネットワークを持っていることが強み。
・今川恵里(いまがわ えり)
厚志の妻。
短大時代に厚志の勤めている会社でバイトしていたところ、彼に見初められて入籍が決まった。
・二ノ宮驟雨(にのみや しゅうう)
こと葉の祖母で、日本を代表する俳人。
本名は二ノ宮キク代。
小山田党首が厚志に出馬を依頼した際、話を聞かずに即答で断った彼を叱りつけた。
・千堂千華(せんどう ちか)
某大手商社の役員令嬢。トウタカ製菓にコネで入社している。
お気楽なところが一致したことから、こと葉と仲良くなった。
結婚する際に、こと葉にスピーチを依頼した張本人。
・鈴木吉造(すずき よしぞう)
牛丼チェーン店「吉原家」の社長。
厚志の結婚披露宴でこと葉がスープ皿に顔を突っ込むほどのスピーチを披露した張本人。
千華の結婚式では和田日間足のスピーチ原稿のおかげで感動的なスピーチを披露し、こと葉を驚かせた。
感想(※ネタバレ含みます。)
僕たちが普段使っている言葉には、正しく使うことができれば世界をより良くすることができるほどの力を持っているということを実感しました。
本作では、元アメリカ合衆国大統領のバラク・オバマ氏のスピーチ技法を頻繁に取り上げていて、久遠久美は「英語という言語の可能性を広げた」くらいにスピーチが上手いと評価しています。
なぜ、彼がスピーチが上手いのかというと言葉に魂が宿っていて且つスピーチを聞いている人たちを巻き込むからだと思いました。
オバマ元大統領の代名詞と言えば、”Yes, We can!”です。
この言葉よくよく考えてみると凄い言葉だと思います。
政治家がスピーチをする際に使うのはほとんどが「私」を主語としています。
「私はみなさんのためにXXします!」みたいなスピーチを耳にしますが、これって一人よがりな言葉のように感じます。
「政治を動かすのは自分だ。だから自分に投票しろ」という捻くれた考え方もできてしまいます。
聴衆は蚊帳の外に置かれている感じが否めません。
しかし、主語を「私たち」とすることで「一国民である自分も政治を動かしているんだ」という意識を、当事者意識を植え付けることができるのです。
そして大統領になるであろう人に「私たちはできる!」と自信を持って言われることで、その気になれば現状を変えることができるのではないかという期待を抱きます。
聴衆の心を掴むのが非常にうまかったんだなと改めて思いました。
日本の政治家の言葉がどうして心に響かないのかと言えば、主語が「私は~」になっているからだと思います。
ただもっと深刻なことは、常に原稿を読んでいるからだと思います。
スピーチの極意の一つとして「エピソード、具体例を盛り込んだ原稿を作り、全文暗記すること」と紹介されています。
カンニングペーパーの通りに読んでしまうと、スピーカーがいくら情熱を持って訴えかけていても聴衆からしたら「カンニングペーパーを読んでいるだけで、感情がこもっていない」だとか、「一言一句間違えないように気を付けているだけ」というような印象を持たざるを得ないと思います。
しかしスピーカーがすべきことは、一言一句間違えないようにカンニングペーパーに書いてあることをただ伝えることではありません。
聴衆の心に言葉を情熱を持って届けることだと思います。
そして聴衆の心に届いて、初めて良いスピーチだったと評価することができるのだと思います。
拙い言葉でも自分の想いを伝える。
その方が原稿をただ読むよりも、人柄が出て聴衆の心に言葉が響くのではないかと思いました。
最後に
今回は原田マハさんの『本日は、お日柄もよく』の感想記事を書いていきましたが、いかがだったでしょうか。
本作ではスピーチで特に意識しておかなければならないことが、極意として紹介されており、スピーチをする人にとってはとても参考になると思います。
スピーチライターとはどんな仕事をしているのか、どうやって原稿を作っていくのかを知ることができたので、個人的には面白かったです。
気になる方は、本作をチェックしてみてはいかがでしょうか。
なお、本作はWOWOWでドラマ化されています。
主演は女優の比嘉愛未さんです。
これも僕はまだ観ていませんが、機会があればチェックしたいと思います。
以上、原田マハさんの『本日は、お日柄もよく』の感想記事でした。
最後までご覧いただき、ありがとうございました!
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