にかどくの平凡生活

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「人を愛する」とはお互いの苦しみを背負うこと ~窪美澄著『やめるときも、すこやかなるときも』読了!~

にかどくです。

 今回は『やめるときも、すこやかなるときも』を読了したので、こちらの感想を書いていきたいと思います。

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著者紹介

本作の『やめるときも、すこやかなるときも』の著者は、窪美澄さんです。

1965年東京都生まれ。2009年「ミクマリ」で第8回女による女のためのR-18文学賞大賞を受賞しデビュー。

11年『ふがいない僕は空を見た』で第24回山本周五郎賞を、12年『晴天の迷いクジラ』で第3回山田風太郎賞を受賞。

ほかの著書に『じっと手を見る』『トリニティ』『いるいないみらい』など。

 

窪美澄著『やめるときも、すこやかなるときも』

(2019年/集英社/著者紹介より)

 

概要

家具職人の壱晴は、毎年十二月の数日間、声が出なくなる。

原因は過去にあったが、誰にも話さず生きてきた。

一方、会社員の桜子は困窮する実家を支え、恋とは縁遠い。

二人は知人の結婚式で偶然出会い”一夜”を過ごすが、後日、仕事相手として再会し……。

欠けた心を抱えた二人が戸惑い、傷つきながらも歩み寄っていく道のりの痛みと温もり。

他者と共に生きることのいとおしさに満ちた傑作長編小説。

 

窪美澄著『やめるときも、すこやかなるときも』

(2019年/集英社/裏表紙より)

 

登場人物

ざっくりとですが、主要な登場人物をまとめてみました。

 

・須藤壱晴

32歳の家具職人。

ある事情により毎年12月のある時期になると声が出なくなるという「記念日反応」が起き、その不安を払拭するために女遊びをしている。

本橋桜子とは、妙子に呼び出されて気乗りしないまま出席した結婚式のパーティで出会い、一夜を共にした。

 

・本橋桜子

32歳の広告会社の営業職。

32歳になってまで男性経験がほとんどない。

また、ある事情により働いて得たお金は全て家に入れている。

須藤壱晴とは、仕事先の人の結婚式のパーティで出会い、一夜を共にした。

 

・柳葉優太

小料理屋の主人で、かつては壱晴と共に家具職人をしていた。

 

佐藤哲

家具職人で壱晴の師匠。

 

・大島真織

壱晴が高校時代に恋をした女子で、家を出たいがために、平日は午後9時まで、土日はフルタイムでバイトをしていた。

勉強もしっかりとしており、学年トップ10から外れたことがなかった。

ブレーキの利きが悪い自転車を使って、高校やバイト先に通学・通勤していた。

 

・妙子

壱晴の大学生時代の同級生。

 

・桃子

桜子の妹で既婚者。

娘の花音と共に、よく実家に遊びに来る。

 

感想

本作を読んで、人を愛するとはお互いの苦しみを背負うことだとつくづく思いました。

壱晴と桜子はそれぞれに苦しみを抱えています。

 

壱晴の苦しみは、高校時代に自身のせいで大島真織が死んでしまったことです。

壱晴はバイト終わりの真織を彼女の家の近くまで送っていました。

(本当は彼女の家まで送りたかったが、それは彼女から断られています。)

彼女が亡くなる日、壱晴は風邪を引いている状態で彼女を家に送るためにバイト先に来ました。

しかし、真織は風邪を引いている壱晴を心配し彼を早く自宅に帰らせるために、横断歩道のない場所で車の切れ目が出たところで横断します。

そのとき、信号無視をした大型トラックに轢かれてしまいます。

彼女は自転車に乗っていたのでブレーキをかけましたが、間に合いませんでした。

壱晴は事故が起きる以前に、パンクした彼女の自転車を近所の自転車屋に修理依頼をしています。そのときにブレーキの利きが悪いので修理をした方が良い自転車屋の主人に進言されていました。そのことを真織に伝えたものの、真織はブレーキを修理しませんでした

もしも壱晴がパンク修理と共にブレーキの修理を依頼していれば……。

そして、風邪を引いている状態で真織を送るのをやめていれば……。

愛していた人が自分のせいで死ぬというのは、精神的衝撃が大きかったと思います。

 

桜子の苦しみは、家に縛られているということ、そして男性経験が無いというコンプレックスです。

桜子の父は印刷会社の2代目社長だったものの不景気の煽りを受け、桜子が幼いときに倒産しています。

それ以来、桜子の父は酒に溺れ、家族に暴力を振るうという状態になってしまいました。

桜子は家族を支えるため、大学生のときは生活費と学費を支払う為にバイト漬けの毎日を送っていました。

社会人になってからも家にお金を入れ続けました。

そのおかげで、自分で自由に使えるお金がないので遊ぶ余裕がありません。

遊ぶ余裕もないので、異性との出会いもあまりありません。

そういう経緯があり、桜子には男性経験を積む機会はありませんでした。

そんな桜子にも彼氏はいたのですが、しかし彼氏からは振られています。

理由は、重いからです。

男性経験が皆無なので、間合いがわからなかったのです。

だから相手に捨てられないように付き合っていたのですが、それが逆効果となってしまったのです。

(衝撃的なセリフが桜子から飛び出しているので、気になる方は本作を読んで確かめてみてください。)

 

お互いに何かしらの苦しみを抱えている2人。

この2人が付き合うようになったのは、お互いの苦しみを解消するためだけのような気が僕にはしました。

壱晴が桜子と付き合おうとしたのは、「記念日反応」を解消するためだと思います。

大切な誰かと共に「記念日反応」が起こるきっかけとなった場所に訪れることで、「記念日反応」が解消するかもしれないと壱晴は医者に言われています。

桜子は男性経験が無いというコンプレックスを打ち消すため、そして、家から出るためだと思います。

 

でも、お互いが真剣に愛し合い始めたきっかけは、「記念日反応」が出るきっかけとなった場所(=真織が交通事故で亡くなった場所)に2人が訪れたときです。

桜子はこの場所で壱晴が真織との過去を大切にしているとわかり、一方的に別れを告げます。それからはお互いに仕事が忙しくなってしまい、なかなか会えませんでした。

が、壱晴にとっては真織が亡くなった場所に一緒に訪れた桜子のことを忘れることはできませんでした。

何せ、自分の苦しみを初めて打ち明けた相手なのですから、それだけでもう桜子は特別な存在になっていたと思います。

さらには桜子の家庭状況が真織のものと似ていたことから、今度こそは愛した人を苦しみから救いたいと思ったのかもしれません。

壱晴は桜子に作ると約束した『桜子の椅子』の制作に集中します。

桜子にとっては、自分のための椅子を作ってくれた壱晴の姿を見て、いまを生きている自分を大切に想ってくれていることを感じ取ります。

そして、ある時期に声が出なくなってしまうという壱晴の苦しみを少しでも和らげようという決意をしています。

 

2人の愛は最初こそは打算的でしたが、最終的にはお互いの苦しみを理解し支え合う決意に変化していると思いました。

本当の愛に2人が気付けて良かったと思いました。

この2人なら困難な場面を乗り越えられると勝手に思いました。

 

最後に

今回は窪美澄さんの『やめるときも、すこやかなるときも』の感想を書いていきましたが、いかがだったでしょうか。

 

僕はどちらかというと桜子に感情移入しました。

恋愛経験が0に近いということもあり、異性との間合いがわからないというのはとても共感できました。

独身のまま一生を終えることになるのか、はたまた桜子のような運命的な出会いがあるのかわかりませんが、可能ならば独身は避けたいです。

(この2人のような出会い方は絶対に避けたいところです。)

 

ちなみにですが、本作は日本テレビ系列で深夜ドラマとして放送していたそうです。

(ちなみにこの記事を書いたときには放送が終わっていました。)

 

Kis-My-Ft2藤ヶ谷太輔さんと『あなたの番です』で注目を浴びた奈緒さんが主演だったそうです。


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映像化した作品も観てみたいという方は、HuluやDVD等でご覧になってはいかがでしょうか。

 

以上、窪美澄さんの『やめるときも、すこやかなるときも』の感想記事でした。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

 

やめるときも、すこやかなるときも (集英社文庫)

やめるときも、すこやかなるときも (集英社文庫)

  • 作者:窪 美澄
  • 発売日: 2019/11/20
  • メディア: 文庫