こんにちは。
にかどくです。
長浦京さんの『リボルバー・リリー』を読了したので、
今回はこちらの感想を書いていきます。
(Amazonにリンクが飛ぶようになっていますが、本ブログ管理者の利益にはなりません。)
著者紹介
本作の著者は長浦京さんです。
1967年埼玉県生まれ。法政大学経営学部卒業。
2011年『赤刃』で第6回小説現代長編新人賞を受賞。’17年デビュー2作目の『リボルバー・リリー』(本書)で第19回大藪春彦賞を受賞し、一躍ハードボイルド・冒険小説の名手として注目を集める。’19年『マーダーズ』で第2回細谷正充賞を受賞。’21年『アンダードッグス』(KADOKAWA)では第164回直木賞、第74回日本推理作家協会賞の候補となる。他の著者に『アキレウスの背中』(文藝春秋)『プリンシパル』(新潮社)がある。
長浦京著『リボルバー・リリー』
(2019年/講談社/カバー袖より)
概要
小曾根百合--幣原機関で訓練を受け、東アジアなどで三年間に五十人超の殺害に関与した冷徹非情な美しき諜報員。
「リボルバー・リリー」と呼ばれた彼女は、消えた陸軍資金の鍵を握る少年・細見慎太と出会い、陸軍の精鋭から追われる。
大震災後の東京を生き抜く逃避行の行方は? 息をもつかせぬ大藪春彦賞受賞作。
長浦京著『リボルバー・リリー』
(2019年/講談社/カバー裏表紙より)
感想(※ネタバレ含みます)
今までなら登場人物を載せていたのですが、まどろっこしいので、
これからはすぐに感想に入ります。
内容に触れるので、内容を知りたくなければここで引き返してください!
では、感想をざっくりと書いていきます。
本作は大正時代を舞台にしており、日本陸軍や海軍が出てきます。
さて、本作はとにかく陸軍の猛攻がとにかく残酷。
陸軍の消えた資金に辿り着く書類を持っている細見慎太の居場所を探るために、
細見一家と家事手伝いを拷問の末殺害。
さらに、慎太が信頼している近所のおじさんである国松も殺害。
また慎太と弟の喬太が逃げ込んだ工場では、陸軍が火を放ち、
弟の喬太を殺害。
目的のためには手段を選ばないというところが本当に恐ろしい。
何とか逃げ切った慎太は小曾根百合と合流しますが、
列車内で陸軍の声のかかった地方のヤクザが行く手を阻みます。
しかし、百合が無力化。
そして百合の身内であるヤクザ集団の水野通商も陸軍に協力します。
とにかく2人をあの手この手で捕まえようとします。
さて、陸軍はどうして彼らを捕まえたいのか。
百合の協力者で弁護士の岩見がその理由を掴みます。
細見慎太の父、欣也は陸軍の武器を東アジアのヤクザ集団に売り払い、
それを元手に証券取引を行い莫大な資金を得て個人口座に入れていたのです。
当時資金が足りなかった陸軍にとっては、この莫大な資金は喉から手が出るほど欲しいもの。
だから必死になってその在り処が書かれている書類を持っている慎太を陸軍は追っていたのです。
一番スリルがあったのは、最後の場面。
岩見は海軍に対して、
百合と慎太の身柄を保護するように交渉します。
海軍は彼らを保護することに決め、
全権者を岩見の先輩であり大佐でもある山本五十六にしました。
山本五十六は彼らに対して電話でこのように伝えました。
日本を守るという目的を持っている2つの組織(陸軍・海軍)が銃弾を交わすことはあってはならない。
これは江戸幕府の時にあった「かけこみ」という考え方です。
自分たちに何の関係もない藩士、旗本、御家人などの武士身分であれば、
その人が殺人犯であろうと追い返してはならないという礼儀があったそうです。
自分たちが迎えに行くことはしないが、
海軍省の敷地に入りさえすれば身柄を保護する。
海軍は静観の立場を取ったのです。
僕だったらあらゆる場所で待ち構えている陸軍やヤクザにひよりそうですが、
百合と慎太は海軍省に向かうことを決めたあたり、肝が据わっているなと思いました。
百合と慎太は日比谷公園まで辿り着きますが、そこには陸軍が集結していました。
そして百合と慎太を捕らえるよう指示を出していた陸軍の小沢大佐もいました。
海軍省の敷地に行かせないように陸軍は総力戦を行います。
壮絶な戦闘に、百合と慎太は海軍省に辿り着けないかと思いましたが、
重傷を負いながらも前進した姿がとても勇敢でした。
そして彼らをサポートした岩見も。
個人的に悲しかったのは、百合のお手伝いをしていた奈加の死。
裏でめちゃくちゃ活躍していただけに、そんな最期を迎えてしまうのか!と悲しくなりました。
百合の心強いサポーターだったのに……。
そして気味が悪いのは、陸軍の小沢大佐の死。
水野通商の五代目である水野武統に殺害されます。
百合と慎太を捕らえられなかったことに責任を感じて拳銃自殺を図ったというシナリオにするよう、小沢大佐の部下に指示します。
この場面で思うことは、水野武統が陸軍以上に力を持っているという点です。
小沢大佐の死は、もししくじったらお前もこんな風になるぞ、というような脅しのように見えるのです。
とにかく、この小説ではまともな人が良い意味でいません。
(まともなのは岩見と山本五十六大佐ぐらいだろうか……。)
終わり方も影があり、「今後の展開は読者の想像にお任せします」感があって良いです。
アクション描写が多いので、もしかしたら好みが分かれるかもしれない小説のように感じました。
最後に
今回は長浦京さんの『リボルバー・リリー』の感想を書いていきましたが、いかがだったでしょうか。
本作は綾瀬はるかさんが主演で映画化されています!
映像でもぜひ観てみたい一作です。
(予告を載せておきます。)
以上、長浦京さんの『リボルバー・リリー』の感想でした。
最後までご覧いただき、ありがとうございました!
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