にかどくログ

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弱虫なサンタが起こす奇蹟 ~宇山佳佑著『君にささやかな奇蹟を』読了~

にかどくです。

 

いつもなら木曜日か金曜日に記事をアップするのですが、感想を書くのに時間がかかってしまいましたので、本日記事をアップする形となりました。

 

今回は『君にささやかな奇蹟を』という小説を再読了したので、感想を書いていきます。

この季節にピッタリな一冊です。

 

君にささやかな奇蹟を (角川文庫)

 

 

著者紹介

本作の著者は宇山佳佑さんです。

1983年生まれ。神奈川県出身。脚本家、小説家。

ドラマ脚本に『信長協奏曲』『スイッチガール!!』『主に泣いてます』、

映画脚本に『今夜、ロマンス劇場で』など。

書き下ろし小説『桜のような僕の恋人』がヒット作となる。

 

宇山佳佑著『君にささやかな奇蹟を』

(2018年/KADOKAWA/カバー袖より) 

 

宇山さんの作品で初めて読んだのは『桜のような僕の恋人』です。

この作品で大粒の涙を流すほど感動したのを覚えています。

それから著者に注目するようになり、本作を手に取りました。

 

概要

子供の頃信じていたサンタクロースが本当にいたら?

しかも日本に。

でも彼はイメージと程遠く愚図で意気地なし。

そんな彼も恋をします。

彼女はどこにでもいる普通の女性。

ですが夢を失い、今の自分に向き合えずにいました。

サンタは彼女のために願いを叶えようとします。

どんな辛いことでも笑顔で隠して。

すると彼女の中で何かが変わり始め―。

現代のおとぎ話は素敵な恋物語

大切なものをもう一度思い出させてくれます。

 

宇山佳佑著『君にささやかな奇蹟を』

(2018年/KADOKAWA/裏表紙より) 

 

主な登場人物

・阿部伊吹(あべ いぶき)

三枝屋百貨店のおもちゃ売り場担当の従業員。27歳。

絵本作家を目指していたが挫折した過去を持つ。

また過去の出来事によって罪の意識にさいなまれ、幸せになってはいけないと思い込んでいる。

 

・明日真聖也(あすま せいや

第108第サンタクロース家当主。27歳。

20歳の時に当主の座に就くがあることで大失敗して自信を失い引きこもりとなる。

伊吹に認められるために自分を変えようと奮闘する。

 

・戸中井(となかい)

サンタクロース家筆頭執事。

聖也の母から聖也を目一杯甘やかしてあげて欲しいという言伝を律義に守り、聖也を優しくサポートする。

 

・神宮ベル(じんぐう べる)

サンタクロース家執事。

目鼻立ちがしっかりしている日本人離れした美女。

甘ったるい喋り方をする。

 

・曽利(そり)

サンタクロース家執事。

頑丈そうな身体を持つ熱血漢。

事あるごとに失態を犯し、聖也に怒られている。

 

・野江小雪(のえ こゆき)

笹塚にあるビア・バー『ユーレニッセ』の経営者で、伊吹の友だち。

妊娠7か月でありながら、未だにバーでの仕事を続けている。

聖也を「サンタくん」と呼び、伊吹に聖也と付き合うことを勧める。

 

・野江銀太(のえ ぎんた)

笹塚にあるビア・バー『ユーレニッセ』の経営者で、小雪の夫。

元は実業団のラグビー選手だった。

 

・大石美紗(おおいし みさ)

伊吹の後輩で23歳。

カールのかかった髪にぱっちりとした二重が特徴的なタヌキ顔の可愛らしい女の子。

 

・進一郎(しんいちろう)

聖也の叔父の息子で、勉強もスポーツもできる文武両道タイプ。

ただし性格は最悪で聖也のことを見下している。

NGOに籍を置き、世界平和のために働いている。

 

・明日真・二コラオス・重治(あすま・にこらおす・しげはる)

サンタクロース家の先代当主で聖也の父。

優秀なサンタで慈善事業やサンタクロース協会の発展にも尽力してきた。

聖也のために結婚相手を探そうとするが聖也に断られたため、1年以内に結婚相手が見つからなければ当主から降ろすことを聖也に告げた。

 

・船井航一(ふない こういち)

サンタクロース研究家。元は帝都大学の准教授。

サンタクロース家の存在に薄々気付いており、正体を嗅ぎまわっている。

 

西荻百合(にしおぎ ゆり)

かつての伊吹の担当編集者。

 

飯田隆一(いいだ りゅういち)

伊吹が勤める三枝屋百貨店の代表取締役社長。

経営不振に陥っていた三枝屋の業績をたった3年でV字回復させた凄腕経営者。

とある理由から伊吹をサンタクロース家当主の結婚相手の候補に選出する。

 

感想(※ネタバレ含みます。)

本作は設定がかなり面白いです。

百貨店やおもちゃ店が『クリスマス』と銘打てるのは、サンタクロース家に売り上げの3%を権利料として納めているからで、もしもその権利料を納めなければ『クリスマス』と銘打つことができないらしいのです。

この設定、かなり面白くありませんか?

権利料を納めなければクリスマスにまつわるものを扱うことができない。

だから『クリスマス』セールはできないし、サンタやトナカイと言ったキャラクターを使うこともできない。

つまりクリスマスの時期には通常営業しかできないということです。

実際にはあり得そうもない事柄だからこそ、本作を面白くしているのだと思います。

そしてこの設定があることで、三枝屋百貨店の飯田が伊吹をサンタクロースと結婚させようとする理由が透けて見えるのです。

 

さて、このサンタクロース家の当主である聖也ですが、この人物はなかなか面白いですし、魅力的です。

この聖也は相当の世間知らずで、正直言うと人間としてダメな部分が沢山あります。

良いことがあるとすぐに調子に乗るし、思ったことはすぐに口に出てしまう。

デートには白一色のスーツで臨むこともあったし、袴で行こうとしたことだってありました。

さらには、行く先々を貸し切りにするというお坊ちゃま振り。

こういうところが世間一般(伊吹)とはズレた感覚を持っているんだなと思いました。

だからこそ伊吹はなかなか彼を受け入れることができませんでした。

さらに失敗を長期間に渡って引きずってしまう性格の持ち主。

(僕も失敗をいつまでも引きずってしまう性格なので、人のことは言えません。)

ダメなところばかりが目立ってしまっています。

 

しかし、聖也には純真さがありました。

だから伊吹に振り向いてもらえるように彼女の無理難題に勇気を振り絞って挑みましたし、伊吹が宝物のように大事にしていた絵本を自力で探し出そうとしました

これは大切な人を幸せにしたい、笑顔にしたいという素直な気持ちが聖也の行動や意識を変えたのだと思います。

 

そしてそれに引かれるように伊吹の意識も変わり始めます。

最初は空気の読めない聖也に対して嫌悪感を露わにしていましたが、自分のためにひたむきに頑張る聖也を見て嫌悪感がなくなり、次第に惹かれていきます。

そして諦めてしまった絵本作家になるという夢をもう一度目指すようになるのです。

 

物語の終盤で聖也は追い込まれてしまいますが、逃げたい気持ちを抑え込みその窮地に立ち向かっていく姿はとても格好良いものでした。

聖也を窮地で奮い立たせたのは、伊吹との約束もありましたし、サンタクロース家筆頭執事の戸中井の言葉でもありました。

この戸中井の言葉がとても染みるんです。

要約すると「勇気とは誰の心にも平等に備わっていて、勇気を出すには自分を信じることだ」と戸中井は言っているのです。

これってとても力をもらえる言葉ですし、聖也に「変わってもらいたい」「強くなってもらいたい」という戸中井の気持ちが込められているように感じました。

 

本作は魅力的な人物が沢山出てくるので、読書に抵抗感がある方でも楽しく読めると思います。

伊吹と聖也がどのようになるのか、是非皆さんの目で確かめて欲しいと思います!

 

最後に

今回は宇山佳佑さんの『君にささやかな奇蹟を』の感想記事を書いていきましたが、いかがだったでしょうか?

 

この作品は弱虫なサンタクロースが好きな人を幸せにするために、笑顔をするために奮闘する物語です。

そして大切なことを思い出させてくれる作品でもあります。

 

この時期に再読したのは、クリスマスに是非読んでいただきたいなと思ったからです。

最高の幸せが訪れる日に最高に心温まる物語を皆さんに知って欲しかったがために、今回感想記事を書かせていただきました。

 

以上、宇山佳佑さんの『君にささやかな奇蹟を』の感想記事でした。

最後までご覧いただき、ありがとうございました!

 

君にささやかな奇蹟を (角川文庫)

君にささやかな奇蹟を (角川文庫)

 

 

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