にかどくです。
本日2回目のブログ更新です。
今回は『火のないところに煙は』を読了したので、こちらの感想を書いていきます。
著者紹介
本作の著者は芦沢央(あしざわ よう)さんです。
1984(昭和59)年、東京生れ。
千葉大学文学部卒業。2012(平成24)年、『罪の余白』で第3回野性時代フロンティア文学賞を受賞しデビュー。
’18年、『火のないところに煙は』で静岡書店大賞受賞。
ほかの著書に『悪いものが、来ませんように』『今だけのあの子』『いつかの人質』『貘の耳たぶ』『僕の神さま』『汚れた手をそこで拭かない』『髪の悪手』などがある。
引用元:芦沢央著『火のないところに煙は』(2021年/新潮社/ブックカバー袖)
あらすじ
「神楽坂を舞台に怪談を書きませんか」
突然の依頼に、作家の〈私〉は驚愕する。
心に封印し続けた悲劇は、まさにその地で起こったのだ。
私は迷いつつも、真実を求めて執筆するが……。
評判の占い師、悪夢が憑く家、鏡に映る見知らぬ子。
怪異が怪異を呼びながら、謎と恐怖が絡み合い、直視できない真相へとひた走る。
読み終えたとき、それはもはや他人事ではない。
ミステリと実話怪談の奇跡的融合。
引用元:
芦沢央著『火のないところに煙は』(2021年/新潮社/裏表紙)
感想(※ネタバレ含みます)
本作は6つの短編で構成されている作品です。
「染み」
「お祓いを頼む女」
「妄言」
「助けてって言ったのに」
「誰かの怪異」
「禁忌」
以上が本作を構成している短編なのですが、僕が恐ろしく感じたのは「妄言」という話です。
この話では、夫婦が物件の内見をしているところから物語が始まります。
内見している物件の近所に住んでいるおばさんがこの夫婦に話しかけるのですが、その内容がなんとも不可思議なものでした。
夫婦がまるでその物件に住むことが確定しているかのように話してくるのです。
「いくら何でも早とちりしすぎなのでは?」と思うかもしれませんが、一方で面識のない人にも自ら積極的に話しかける姿にはとても好感が持てます。
もし自分がこの夫婦の一人だったとしても、あまり嫌な感情を抱かなかったと思います。
少々お節介だなとは思いますけどね。
結局その夫婦は内見した物件に住むことになり、近所のおばさんと交流を深めていきます。
そんなある日、このおばさんはこの話の主人公の妻に、「あなたの夫が浮気している」というようなことを告げるのです。
主人公は浮気などしていないにも関わらず、浮気をしているあなたの顔を目の前で見た、とおばさんは主張します。
一度はこのおばさんは引き下がりますが、最終的には主人公を人殺しと主張します。
この主人公はそんなことをしていないにも関わらず、です。
この主人公やおばさんがどうなったのかはここでは書きませんが、虚言癖を持っている人が近くにいると場合によっては自分の人生を滅ぼす可能性があると実感した瞬間、なんだか恐ろしく思いました。
下手したら良好な人間関係をぶち壊す可能性がありますからね。
そしてこの話を読んでいたら、不意にモキュメンタリーの『放送禁止』の「恐怖の隣人トラブル」の回を思い出してしまいました。
話の性質は全く違いますが、どちらも異常な狂気を感じました。
この異常な狂気も僕が恐ろしいと感じた原因の一つです。
部屋探しをするときは、近所にどんな人がいるのかも精査して決める必要がありそうですね。
そして一番の謎はこのおばさんは何の目的を持って、夫婦に妄言を吐いていたのか。
全体の物語の主人公である私(芦沢央さん本人)がいろいろと調べるのですが、まったくその目的が明らかになっていません。
目的のわからない言動は不気味ですよね。
予測ができない動きをされるのは本当に怖いです。
そして最後の話で各話に隠された真実が判明するのですが、この真実の解明によってさらに各話を恐ろしくさせています。
実は各話にはある人物の影がちらついているのです。
この人物と関わったら絶対にしてはいけないことがあるのですが、それは本作のお楽しみということで筆を止めます。
最後に
今回は芦沢央さんの『火のないところに煙は』の感想を書いていきましたが、いかがだったでしょうか。
本作はホラーとミステリーが掛け合わされているので、どちらのジャンルも好きっていう方は存分に楽しめると思います。
また、文庫本のブックカバーの裏面にはさらに面白くて且つ恐ろしい仕掛けがあります。
この物語を読み終わっても恐怖はまだまだ続きます。
気になった方は是非読んでみてください!
以上、芦沢央さんの『火のないところに煙は』の感想でした。
最後までご覧いただき、ありがとうございました!
☆宜しければ、記事に対する感想をコメントしていただけると嬉しいです☆
僕のプロフィールについての記事☟