にかどくです。
今回は『千手學園少年探偵團』を読了したので、こちらの感想を書いていきます。
著者紹介
本作の著者は、金子ユミさんです。
『アナタを瞳でつかまえる!~天然女子はカメラアイ⁉』(コスミック出版)でデビュー。
ゆるみみゆ名義でボーイズラブノベル、漫画原作を手がける。
幼少の頃より、江戸川乱歩や横溝正史など、妖しく艶やかな世界観に耽溺。
近著に『異世界宿屋でおもてなし~転生若女将の幸せレシピ!~』(コスミック文庫α)がある。
金子ユミ著『千手學園少年探偵團』
(2019年/光文社/カバー袖より)
概要
時は大正時代、東京府——。
大蔵大臣・檜垣一朗太の妾の子・永人は、嫡男の”謎の失踪”を受け、急きょ跡継ぎとして名門私立千手學園に放り込まれることに。
学園内では妖しげな呪いの噂が流行しており、永人は思いがけず友人たちとその解決に挑んでいく。
学園に蔓延る謎を、そして義兄失踪の真相を暴くことができるか⁉
大正浪漫の香り漂う本格学園ミステリ、ここに開幕!
金子ユミ著『千手學園少年探偵團』
(2019年/光文社/裏表紙より)
登場人物
主な登場人物は以下の通りです。
・檜垣永人(ひがき ながと)
現大蔵大臣である檜垣一郎太の妾の子。
三味線弾きの母親である千佳と共に浅草界隈で生活していた。
しかし、一郎太の嫡男である蒼太郎が失踪したことで急遽千手學園に編入させられた。
・来碕慧(きさき けい)
東京府内随一の大病院・来碕病院の息子。
昊とは双子であり、慧は兄にあたる。
病弱で人当たりが良く、生徒からの人気も高い。
編入してきた永人を大歓迎した。
・来碕昊(きさき こう)
慧の双子の弟。
運動神経、学業の成績ともに優秀。
病弱の慧の傍にいつでもおり、ボディーガードの役割を果たしている。
永人には当初警戒していた。
・多野乃莉生(たの のりお)
千手學園で住み込みで働く用務員一家である多野家の一人息子。
しかし、本当は息子ではなく娘であり、本当の名前は乃絵(のえ)といい、深夜にピアノを教えてもらうために男装した。
・東堂広哉(とうどう ひろや)
千手學園の最上級生であり、生徒会長。
現陸軍大臣の広之進の息子。
感想(※ネタバレあり)
本作の主人公である檜垣永人はとても曲がったことが嫌いな正義感溢れる人物です。
そして、優しさも持ち合わせている人物です。
永人に敵対心を持っている人物がこの学園には2名いました。
その2名とは、小菅幹一とその弟の幹二です。
実はこの2人の父親は、警視庁警視総監の小菅勉です。
この物語は大正時代を舞台にしているため、当時の警察のイメージは「尊大」と「横暴」がかなり先行していたようです。
つまり、庶民には不人気で、この2人も例外ではありませんでした。
浅草界隈で生活していた永人をこの2人は敵視していました。
だから、第二話の「血を吐くピアノ」では小菅兄弟に、ピアノが弾けるかと永人に問いかけ、永人はピアノが弾けないのにも関わらず「弾ける」と答えてしまいます。
でも最終的に彼は「ピアノが弾けない」という事実と彼らの父親を侮辱したことを謝罪しています。
この潔さがとても清々しくて、自分の弱みとなるようなことでも素直に認めることのできる強さを持っている人物なのだろうなと思いました。
この告白には実は優しさも含まれていました。
この告白は、ピアノを弾きたいと思っていた用務員の息子である多野乃莉生(実は男装した女子で、本当の名前は乃絵)がピアノの練習に参加できるようにするためでもあったのです。
ピアノを本当に弾きたいと思っている人間が、千手學園の生徒では無いからという理由だけでそれができないというのが永人にとっては気に入らなかったのかもしれません。
そして極めつけは第四話「恋の呪い 懲罰部屋」です。
この話では学園内で起きた窃盗事件の犯人を見つけ、その犯人と永人が対峙します。
この犯人というのは犯人探しに協力していた乃絵を階段から突き落とすばかりでなく、命すら狙い、一連の窃盗事件の犯人を乃絵に濡れ衣を着せようとさえしました。
その犯人に永人が言ったセリフがこちらです。
「だけど俺なりに、越えちゃならねえ一線ってのがあんだよ。何があろうと、自分より弱い立場の人間を貶めねえってな」
金子ユミ著『千手學園少年探偵團』
(2019年/光文社/275頁11~12行目)
力を持つ人間にありがちなのは、自分の地位を確固たるものにするために弱い立場の人間を虐げることだと思います。
この犯人も例外ではありませんでした。
自分にメリットがあることならば、どんな手を使ってでも他人を蹴落とす。
その「自分さえ良ければ他人なんてどうなっても構わない」という性根や、友人を傷付けたということが許せず、思わず手が出てしまったのかもしれないと思いました。
こんな人物が現実にいてくれたら、世界は少しでも変わるのかもしれません。
特に政治の世界ではこういう人物がいてくれた方が良いかもしれません。
最後に
今回は金子ユミさんの『千手學園少年探偵団』の感想記事を書いていきましたが、いかがだったでしょうか。
本作は大正時代を舞台としているため、地名が少々古いです。
(東京でも、東京”都”ではなく東京”府”となっているのに時代を感じます。)
一人ひとりのキャラクターも魅力的ですが、ミステリ・サスペンス好きの方にとっては少々物足りなさを感じるかもしれません。
感想では一切触れませんでしたが、檜垣一郎太の嫡男である蒼太郎が失踪した理由がとても意外でした。
その理由が知りたい方は、是非読んでみてください!
ちなみに、本作は日向坂46とコラボレーションした「日向坂文庫2021 冬の書店デート」フェアの1冊として選ばれています。
このフェアは対象書目がなくなり次第終了とのことなので、日向坂46のスペシャルカバーをGETしたい方は、手に取ってみてください!
ちなみに本作は上村ひなのさんがスペシャルカバーを担当しています。
以上、金子ユミさんの『千手學園少年探偵團』の感想記事でした。
最後までご覧いただき、ありがとうございました!
☆宜しければ、記事に対する感想をコメントしていただけると嬉しいです☆
僕のプロフィールについての記事はコチラ☟